井上内親王

井上内親王の生涯と影響

井上内親王（いのえないしんのう）は、717年に生まれ、775年に亡くなった日本の皇族であり、聖武天皇の第一皇女です。彼女の母は県犬養広刀自で、伊勢神宮の斎王としての役割を果たし、後に第49代光仁天皇の皇后としても知られています。彼女は別名で井上廃后や吉野皇后とも称されました。

斎王からの道のり

井上内親王は721年、わずか5歳で伊勢神宮の斎王に選ばれ、727年に伊勢へ下向しました。ここでの彼女の地位は重要で、神聖な役割を担いましたが、744年には弟の安積親王の死去により斎王の任を解かれ、帰京します。その後、彼女は白壁王（光仁天皇）と結婚し、748年には無品から二品に昇進しました。

高齢での出産

井上内親王にとって、出産は彼女の人生の重要な側面でした。754年には酒人内親王を37歳で、761年には他戸親王を45歳で出産しました。当時、45歳での出産は非常に珍しいことであり、周囲からは驚きをもって受け止められました。記録では、彼女の出産について様々な憶測があり、特に他戸親王については歳数の誤記が存在すると言われており、確かな情報が残っていません。

皇后から廃后へ

770年に光仁天皇が即位した際、井上内親王は公式に皇后となりましたが、772年には彼女の運命が一変します。同年3月、光仁天皇を呪詛したという疑惑が持ち上がり、彼女は皇后の地位を剥奪されます。同年5月には他戸親王も廃太子にされ、彼女と共に追放されてしまいます。この過程では、井上内親王が難波内親王を呪詛し、難波内親王の死に関与したとの疑念が呼び起こされ、結果として彼女と他戸親王は庶人に落とされます。

不遇な最期

775年4月27日、井上内親王は幽閉先で他戸親王と同日に亡くなることになります。この死に関しては暗殺や自殺の噂が立ち、彼女の運命は悲劇的なものとなりました。彼女の廃后と他戸親王の廃太子は、藤原氏の権力闘争の一環とも見ることができ、その後の皇位継承に大きな影響を与えました。

伝説と信仰

井上内親王の廃后の後、日本各地で彼女の怨霊が恐れられ、亡霊信仰が広がりました。757年からは天災が続き、江戸時代には彼女が竜になったという噂も立ちました。このため、皇后の遺骨は改葬され、「御墓」と呼ばれるようになり、彼女の名誉も徐々に回復されました。800年には改めて皇后としての称号を与えられ、御霊信仰とも結びついてその後の神社への祭祀の対象ともなりました。

井上内親王の生涯は、当時の皇族社会における女性の立ち位置とその運命の変転を如実に示すものであり、今なお多くの研究の対象となっています。彼女の姿は、単なる皇族に止まらず、歴史的な伝説や神話の中でも生き続けているのです。

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