他戸親王

他戸親王について

他戸親王（おさべしんのう）は、光仁天皇の皇子であり、聖武天皇の皇女である井上内親王を母に持ち、天武天皇の女系の子孫に該当します。彼は皇太子に任命されたものの、母の井上内親王の大逆の罪により地位を追われ、庶人に転落し、相次ぐ悲劇の末に命を落としました。

生誕と背景

天平宝字5年（761年）、他戸親王は白壁王（後の光仁天皇）と井上内親王の間に誕生しました。母方の叔母は称徳天皇で、当時の天皇ではありました。父の白壁王は天智天皇の孫ではあるものの、皇統はすでに天武天皇系に引き継がれており、白壁王自身は凡庸な人物とされていました。しかし、称徳天皇の時代、天武系の皇族は内紛により多くが粛清されたため、他戸親王の母の血統は次第に注目を集めることとなります。

称徳天皇の崩御後、藤原永手の支持を受けて、他戸親王の父である白壁王が皇位継承者として立てられ、宝亀元年（770年）に光仁天皇として即位しました。その翌年、他戸親王は光仁天皇の皇太子として指名されます。

皇太子としての経歴

他戸親王が皇太子として立てられた時、彼の未来は明るく見えました。しかし、宝亀3年（772年）に突然、皇后である井上内親王が天皇に呪詛を行ったとの理由で廃され、同時に他戸親王も皇太子の地位を追われました。この一連の事件は、他戸親王の立場を不安定にし、母と共に重い罪の咎めを受ける運命をたどります。

さらに、同年に母が天皇の同母姉である難波内親王を呪詛し、結果として彼女を殺害したとされる嫌疑がかけられました。このため、他戸親王は母と共に庶人に落とされ、大和国宇智郡（現在の奈良県五條市）に幽閉されてしまいます。この幽閉生活は、彼らにとって厳しいものであり、その後、宝亀6年（775年）4月27日に急死したとされています。死因には暗殺説も浮上しており、彼の運命は謎に包まれています。

運命の転換と影響

他戸親王の悲劇的な死は、皇太子に立てられた異母兄の山部親王に影響を与え、その後、山部親王は桓武天皇として即位します。しかし、他戸親王の死をきっかけに、天変地異が相次ぎ、さらに宝亀10年（779年）には彼の偽者が周防国で現れるなど、「他戸親王の怨霊」がその後の天皇に影響を与え続けました。このように、他戸親王はその生涯を通じて、皇室内の派閥争いと陰謀の渦中に巻き込まれ、不幸な運命を辿ることとなったのです。

系譜

• - 父: 光仁天皇
• - 母: 井上内親王（聖武天皇の皇女）
• - 同母姉: 酒人内親王

このように、他戸親王は彼の出自、立場、そして最後の結末において、藤原氏の影響力や政治的陰謀が絡む、複雑な歴史の中に存在していました。

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