井上明久について
井上 明久(いのうえ あきひさ、
1947年9月13日生まれ)は、日本の金属学者であり、
東北大学の第20代総長を務めました。彼は金属物性、無機材料・物性、構造・機能材料に関する専門知識を持ち、特にアモルファス合金や金属ガラスの研究で名を知られています。しかし、彼の研究には不正行為の疑惑も浮上しています。
経歴と業績
井上は姫路工業大学工学部金属材料工学科を卒業後、増本健の指導のもとで
東北大学大学院に進学し、1975年に工学博士の学位を取得しました。1976年4月には
東北大学金属材料研究所に助手として着任し、その後、1990年には教授に昇進しました。2006年から2012年にかけては
東北大学の総長として大学の発展を推進しました。
彼の業績には、金属ガラスなどの高機能非平衡物質の精製法の開発があり、この分野で彼は重要な役割を果たしました。彼の論文は、1981年以降で14,000回以上引用されており、材料科学分野において国際的に高く評価されています。また、2006年には
日本学士院の会員に選出されました。
総長としての任期中、井上は「井上プラン2007」を策定し、
東北大学を世界のトップ30に入る大学として位置づける目標を掲げました。この計画の下、WPIプログラムへの採択や国際的な大学評価など、大学の国際化を進めるさまざまな施策を推進しました。さらに、法人化に伴う経営体制の強化や新たな基金の設立にも貢献しました。
彼の受賞歴には、2002年の
日本学士院賞や、2006年の内閣総理大臣賞などがあります。2010年にはActa MaterialiaからGold Medalを受賞し、2024年には
瑞宝大綬章を受章する予定です。
不正行為の疑惑
一方で、井上は一部の論文に関して二重投稿や研究不正の疑いをかけられています。2007年には匿名の告発があり、
文部科学省が調査を実施しました。
東北大学は内部での調査を行い、再現性は確認されたものの、2009年には捏造の可能性が指摘されました。
その後も、井上の論文が二重投稿だったとして撤回される事例が続きました。2011年6月には論文が二重投稿として取り下げられ、最終的に6本の論文が二重投稿の事実に基づいて取り下げられました。井上はこれに対し、事故や共著者との行き違いが原因であると説明していますが、
科学技術振興機構による調査も進められました。
2019年には
日本金属学会が3本の論文を撤回したことが報じられ、これらも「科学的に不適切」とされました。撤回された論文は、金属ガラスについて述べたものであり、井上は長い期間を経た論文であるため特別な意味はないとコメントしています。
主著
- - Bulk Metallic Glasses (2011, Taylor & Francis)
- - 新機能材料金属ガラスの基礎と産業への応用 (2009, テクノシステム)
- - バルク金属ガラスの材料科学と工学 (2008, シーエムシー出版)
- - ナノメタルの最新技術と応用開発 (2003, シーエムシー出版)
- - Bulk Amorphous Alloys - Practical Characteristics and Applications (1999, Trans Tech Publications)
井上明久氏はその学問的な業績と同時に、研究倫理に関する疑惑に直面する複雑な経歴を有しています。