井上正岑

井上 正岑の生涯と業績

井上 正岑（いのうえ まさみね）は、江戸時代の初期から中期にかけて活躍した大名であり、老中として幕府の政治に深く関わった人物です。彼は美濃国八幡藩の第2代藩主として始まり、丹波国亀山藩主、常陸国下館藩主、さらに常陸笠間藩主としても知られています。官位は従四位下・大和守、侍従、河内守を歴任し、浜松藩井上家の第4代にあたります。

生涯の概略

正岑は1653年（承応2年）、美濃八幡藩初代藩主である井上正任の次男として誕生しました。彼の人生は、兄・正幸の廃嫡に伴い、元禄2年（1689年）に嫡子となったことから始まります。元禄5年（1692年）には家督を相続し、弟の正長に3千石を分与しました。これにより、家の体制は固まり、正岑は次第にその地位を確立していきました。

元禄8年12月（1696年）には奏者番に任命され、翌年には寺社奉行も兼務することとなりました。元禄10年（1697年）には丹波亀山に転封され、その後、元禄12年（1699年）に若年寄に就任します。正岑はその後も徳川幕府において重要な役割を担い、元禄15年（1702年）には常陸下館藩へ転封されたものの、城が手狭であることから即日常陸笠間に移ることになりました。

続いて、宝永2年（1705年）には老中に昇進し、同年12月には従四位に昇任、翌宝永3年12月には侍従となるなど、彼の政治的な地位はますます高まります。正岑は正徳5年（1715年）には東照宮百回忌の法要の総奉行を務め、また享保3年（1718年）には大規模な加増を受けました。

正岑は享保7年（1722年）5月17日に70歳で死去し、その後を養子の正之が継ぎました。

人物像

幕府での地位を築いていった正岑ですが、政治家としては物議を醸すこともありました。新井白石の『折りたく柴の記』によると、彼は冷淡で、悪意に満ちた性格として描写されています。また、ある落書きには「死んでも惜しくないもの 鼠捕らぬ猫と井上河内守」という言葉が江戸中に広がっていたこともあり、その名声には厳しい評価もありました。

家族においては、妻である清姫が紀州藩の徳川光貞の姪であったため、幕府補佐の立場において大きな影響力を持っていました。特に、吉宗が8代将軍に就任するにあたって、正岑の支持が一因と言われています。さらに、7代将軍徳川家継が病に臥せる中では、他の老中たちが尾張藩主を推す中、正岑は吉宗を推したとされています。

年譜

• - 1653年（承応2年）: 生誕
• - 1691年（元禄4年）: 清姫と婚姻
• - 1693年（元禄6年）: 美濃八幡藩襲封
• - 1696年（元禄9年）: 寺社奉行
• - 1697年（元禄10年）: 丹波亀山藩に転封
• - 1699年（元禄12年）: 若年寄
• - 1702年（元禄15年）: 常陸下館藩を経て、常陸笠間藩へ転封。1万石加増。
• - 1705年（宝永2年）: 老中
• - 1722年（享保7年）: 死去

系譜

• - 父: 井上正任
• - 母: 本多忠義の娘
• - 正室: 清姫（松平頼純の娘）
• - 養子、養女: 井上正富（井上正晴の長男）、井上正之（酒井重英の長男）、水野忠輝正室（井上可安の娘）

このように、井上正岑の生涯は、幕府の政治における重要な一角を占めるものでした。彼の強い意志と政治的判断力は、江戸時代の歴史に名を刻んでいます。

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