井上正忠

井上正忠（いのうえ まさただ、1908年 - 1982年12月11日）は、昭和時代の鉄道官僚、実業家であり、京王帝都電鉄（現・京王電鉄）の第4代代表取締役社長を務めた人物です。彼は同社の事実上の創業者である井上篤太郎の孫にあたります。

生い立ちと初期の経歴

神奈川県出身の井上正忠は、旧制姫路高等学校を経て東北帝国大学法学部を卒業後、高等文官試験に合格し、鉄道省に入省しました。仙台鉄道局副参事、同総務部人事課長、本省鉄道調査部事務官、東京鉄道局上野運輸事務所長などを歴任し、戦時中の1943年には陸軍司政官として占領地行政に従事しました。

京王帝都電鉄へ

戦後、運輸省を経て日本国有鉄道常務理事西部支社長を務めた後、父である井上正幹が京王帝都電鉄の監査役を退任するのに伴い、同社に入社。常務、専務、副社長を経て、1975年に第4代取締役社長に就任しました。

社長としての功績

社長在任中、井上正忠は京王線の都営新宿線との相互直通運転を実現させました。これは、都心へのアクセスを向上させ、京王線の利便性を飛躍的に高める画期的な事業でした。また、新宿駅～笹塚駅間の地下複々線化、すなわち京王新線の建設にも尽力し、輸送力増強と列車の運行頻度向上に大きく貢献しました。

その後

1982年2月25日、体調を崩した井上正忠は社長職を箕輪圓副社長に譲り、取締役会長に就任しましたが、間もなく逝去されました。東急車輛製造（現・総合車両製作所）、東急レクリエーション各社の取締役、財団法人大東急記念文庫（現・公益財団法人五島美術館）理事なども兼務していました。

井上正忠と京王線のイメージ刷新

戦後も軌道線時代のイメージが残っていた京王線に、1963年、井上正忠（当時常務取締役）の発案により、アイボリー地に臙脂色のラインを施した新型車両初代5000系が登場しました。従来のグリーン車から一新されたそのスマートなデザインは大きな話題を呼び、京王線のイメージを刷新するきっかけとなりました。

親族

祖父：井上篤太郎（京王電気軌道社長）
父：井上正幹（京王帝都電鉄監査役）
叔父：木村篤太郎（検事総長、司法大臣）
従弟：カナオ・イノウエ（日系二世のカナダ人）

井上正忠は、京王電鉄の発展に大きく貢献した人物として、その名が記憶されています。

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