井上泰至

井上泰至氏は1961年生まれの日本の日本文学研究者であり、防衛大学校教授として活躍されています。博士（文学）の学位を持ち、近世文学、特に上田秋成の作品、武士の文学、そして人情本を専門としています。しかし、その研究対象は近世文学のみに留まらず、井原西鶴、正岡子規、高浜虚子といった、近世から近代にかけて活躍した著名な作家にも及んでいます。

井上氏の研究活動は多岐に渡り、上智大学文学部国文学科卒業後、同大学大学院文学研究科博士後期課程に在籍。単位取得満期退学を経て、1989年に防衛大学校助手として教職に就きました。その後、講師、助教授、准教授を経て、2012年には教授に昇進。防衛大学校における長年の貢献は、日本の防衛関連の教育・研究に多大なる影響を与えていると言えるでしょう。

学術界への貢献も顕著です。2010年には日本伝統俳句協会理事に就任、2011年には常務理事を務めました。また、2013年には国文学研究資料館客員教授として客員教授として招聘され、学内外での活動を展開されました。2014年には上智大学より「近世刊行軍書の研究」に関する博士の学位を取得しています。この研究は、近世の軍事文書に関する新たな知見を提供し、学界に大きな衝撃を与えたと推測されます。

これまでに発表された著書は、『雨月物語論：源泉と主題』、『サムライの書斎：江戸武家文人列伝』、『<悪口>の文学、文学者の<悪口>』など多岐に渡ります。これらの著作を通して、井上氏は近世文学における様々なテーマを独自の視点から深く掘り下げ、読者に新たな解釈を提供しています。例えば、『サムライの書斎』では、江戸時代の武士の教養や文化を詳細に描写し、当時の社会構造や思想を理解する上で貴重な資料となっています。また、『<悪口>の文学、文学者の<悪口>』では、文学作品における悪口表現の役割や意味を考察しており、従来の文学研究にはない斬新な視点を提示しています。さらに、『江戸の恋愛作法』や『恋愛小説の誕生：ロマンス・消費・いき』では、近世における恋愛観や文化風俗をテーマに、現代の読者にも興味深い内容を提供しています。

加えて、NHK木曜時代劇『まんまこと ～ 麻之助裁定帳』（2015年7月～10月）では、俳句を担当するなど、学術研究の枠を超えた活動にも積極的に取り組まれています。

井上泰至氏の著作リストは、その研究範囲の広さと深さを如実に示しています。『雨月物語』に関する研究から、『正岡子規』や『高浜虚子』といった近代俳句の巨匠に関する研究まで、その多様性は目を見張るものがあります。さらに、近世の軍事文書や発禁本に関する研究なども行っており、近世日本の社会や文化を多角的に捉えようとする姿勢が見て取れます。

これらの著作は、単なる学術的な論文ではなく、一般の読者にも分かりやすく、魅力的に書かれている点も特筆すべきでしょう。井上氏の著作は、近世文学への理解を深めるだけでなく、日本の歴史や文化への興味を喚起する上で、大きな役割を果たしています。

近世文学研究者として、教育者として、そして著作活動を通じて、井上泰至氏は日本の文化・歴史研究に多大な貢献を続けていると言えるでしょう。今後も、その活躍から目が離せません。

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