井上洋一

井上 洋一（いのうえ よういち）氏は、1949年2月5日に東京都小金井市で生まれた元プロ野球選手、そして指導者です。愛媛大学で教鞭をとる同姓同名の教授とは別人です。

アマチュア時代

拓殖大学第一高等学校で野球に打ち込んだ井上氏は、後にプロでも活躍する宇田東植投手と同期でした。与えられた練習メニューをただこなすだけでなく、常に全力で取り組み、チームでもトップクラスの走力と遠投力を誇りました。特に印象的なのは、不調に陥ったり、思うような結果が出ない時には、自宅に戻って一人居残り練習に励むなど、結果が出るまで妥協しない粘り強さを持っていたことです。

プロ野球選手としてのキャリア

高校卒業後の1966年、井上氏はドラフト外でサンケイアトムズ（現在の東京ヤクルトスワローズ）に入団しプロの道を歩み始めました。プロ入り2年目の1968年には、若手選手の登竜門であるジュニアオールスターゲームに選出されるなど、頭角を現します。翌1969年にはイースタン・リーグで打点王を獲得し、ファームでの実績を積み重ねました。

1970年には一軍に定着。本来は内野手でしたが、外野の守備も器用にこなし、複数ポジションを守れるユーティリティプレイヤーとしてチームにとって欠かせない存在となりました。当時の球団はサンケイからアトムズ、そしてヤクルト（ヤクルトアトムズ）へと名称を変遷させていく時期でした。1975年には、主に三塁手として、また外野手も兼ねながら、51試合で先発出場を果たすなど、チームの戦力として貢献しました。

1976年11月、井上氏は金銭トレードによってロッテオリオンズ（現在の千葉ロッテマリーンズ）へ移籍します。新天地での挑戦が始まりました。ロッテ移籍後、1980年には飯塚佳寛選手や新井昌則選手らとの激しいポジション争いを勝ち抜き、二塁手のレギュラーポジションを獲得しました。しかし、1981年に後に「オレ流」打法で一時代を築く落合博満選手が台頭すると、翌1982年には二塁の定位置を落合選手に譲ることになります。1983年には落合選手が一塁手にコンバートされたことで再び二塁手として出場機会を得ましたが、シーズン後半には若手の西村徳文選手がレギュラーとして起用されるようになり、井上氏の出場機会は徐々に減少していきました。

プロ生活の節目となる記録も達成しています。1967年10月9日の対中日ドラゴンズ戦で初出場、初打席を経験。その後、1970年7月9日の対読売ジャイアンツ戦で初安打を放ち、同年7月12日の対中日ドラゴンズ戦では「7番・三塁手」としてプロ入り初の先発出場を果たしました。プロ初本塁打は1971年10月6日の対中日ドラゴンズ戦で記録しています。そして、プロ17年目の1983年8月24日にはプロ通算1000試合出場を達成。これは史上237人目の快挙でした。

ロッテでは背番号「49」を経て「4」を背負い、現役最後のシーズンとなる1986年までプレーしました。

指導者・裏方としてのキャリア

1986年シーズン限りで現役を引退した井上氏は、古巣であるヤクルト球団に復帰し、指導者・裏方としてチームを支える道を選びました。1987年には二軍守備・走塁コーチ補佐としてキャリアをスタートさせ、1988年からは二軍守備・走塁コーチとして若手選手の育成に尽力しました。1993年からはチーフスコアラーに転身し、2010年までの長きにわたり、相手チームの分析や戦略立案に不可欠な役割を担いました。

球団を離れた現在は、NPO法人「つばめスポーツ振興協会」の講師を務めるなど、野球の普及・振興に携わっています。

プロ野球選手としてはサンケイ、ヤクルト、ロッテの2球団でプレーし、内野手と外野手を兼任できる器用さと堅実なプレーでチームを支えました。指導者、そしてスコアラーとしては長年にわたりヤクルト球団に貢献し、豊富な経験と知識を後進に伝えています。

主な記録
初出場・初打席：1967年10月9日
初安打：1970年7月9日
初先発出場：1970年7月12日
初本塁打：1971年10月6日
1000試合出場：1983年8月24日（史上237人目）
イースタン・リーグ打点王：1回（1969年）

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