井上流

井上流について

井上流（いのうえりゅう）は、日本舞踊の流派の一つで、特に京都で発展したことから「京舞」とも呼ばれています。この流派は、儒者の井上敬助の妹であるサトが近衛家で舞を学んだことに起源を持ち、「八千代」という名と「近衛菱」の紋を受け継ぎ、一流を創設したことに始まります。

特徴と演技スタイル

井上流の舞踏は「踊り」と呼ばれず「舞」という点が特に特徴的です。このスタイルは、極めて硬い線と身体の緊張を特色としており、シンプルな動きの中で豊かなイメージを描き出そうとするものです。舞は主に腰から上の身体の技法を駆使して感情を表現することが重視されており、その優雅さが高く評価されています。初代井上八千代は、近衛家や一条家、仙洞御所に仕え、能からの影響を受けつつも、貴人たちの前で披露するに値する舞踊を作り上げることに情熱を注ぎました。

歴史の背景

明治時代には、祇園の町が「祇園町」と「祇園新地」に分かれており、この時期の「祇園甲部」と「乙部」という呼び名もその後の流派の発展に影響を与えています。「都をどり」は、特に祇園甲部に起源を持ち、井上流はその流儀の一部として確立されました。

二代目井上八千代は、篠塚流に対抗するために、既存の上方舞を集約し、金剛流や人形浄瑠璃、さらには歌舞伎の技法を融合させて新しいスタイルを模索しました。これにより、「京舞井上流」という独自の流派が誕生しました。この流派は、祇園町と結びつき、現在の井上流の基礎を形成しました。

近代の発展

明治5年、井上流の三代目である井上八千代は、京都博覧会で「都をどり」を企画しました。この際、彼女の振付けは井上流のスタイルを採用しており、これが現在の京都祇園甲部の芸妓や舞妓におけるお座敷舞の流儀として広まるきっかけとなりました。井上流はその後、次世代に継承され、四代目井上八千代がその伝統を受け継ぎました。

井上流は、祇園において他の流派の舞踊が許可されていないという独自の約束に基づき、女子のみの流派として知られています。また、代々の家元は京都の能楽シテ方や観世流の片山家と深い関係を持っており、そのために多くの芸術的影響を受け続けています。

家元と舞扇

井上流の家元は、歴代が伝統を受け継ぎ、特に四代目井上八千代は人間国宝としての評価を受けています。舞扇のデザインは、金地に白抜きの井菱定紋が施されており、その模様はお稽古が進むにつれて段数が増す仕組みです。芸妓用、舞妓用、稽古用、子供用にそれぞれ異なるデザインが施されています。

井上流は、京舞としての美しさや技法、歴史と文化の重要さを保持し続け、今なお多くの舞者に愛され続けています。

もう一度検索