井上理恵

井上理恵：日本の近現代演劇研究を牽引する碩学

井上理恵氏は、日本の近現代演劇・戯曲研究において、その名を広く知られる研究者です。桐朋学園芸術短期大学名誉教授、元吉備国際大学社会学部国際社会学科教授という経歴を持ち、学術界に多大な貢献をしてきました。旧字体の「理惠」を本名とし、2019年からは執筆時に「井上理惠」を使用しています。

幼少期から演劇に親しむ

東京に生まれた井上氏は、6歳から日本舞踊を市山流家元に師事。幼い頃から、宝塚歌劇団や歌舞伎、新派などの舞台芸術に触れる機会が多く、演劇への関心を深めていきました。学習院時代には演劇部に所属し、フランス演劇の古典や現代劇の上演に携わり、演出や製作にも関わりました。

学術研究の道へ

早稲田大学大学院文学研究科修士課程演劇専修を修了後、河竹登志夫、鳥越文蔵という演劇研究の大家に師事し、近現代演劇・戯曲研究の道へと進みます。その研究成果は高く評価され、『近代演劇の扉をあける』で日本演劇学会河竹賞を受賞しました。

学会活動と社会貢献

ロンドン大学SOAS visiting fellowとしての研究活動に加え、日本演劇学会では幹事、理事、副会長といった要職を歴任し、学会の発展に尽力しました。吉備国際大学社会学部教授として教鞭を執る傍ら、同学部の学科長も務め、後進の育成にも力を注ぎました。また、日本社会文学会関東甲信越ブロック代表、有島武郎研究会代表幹事など、幅広い分野で活躍しています。

主要な著作

井上氏の研究成果は、数多くの著書として結実しています。

『久保栄の世界』（社会評論社、1989年）
『近代演劇の扉をあける ドラマトゥルギーの社会学』（社会評論社、1999年。2000年、第32回日本演劇学会河竹賞受賞)
『菊田一夫の仕事　浅草・日比谷・宝塚』（社会評論社、2011年）
『川上音二郎と貞奴　明治の演劇はじまる』（社会評論社、2015年2月）
* 『清水邦夫の華麗なる劇世界』（社会評論社　2020年8月）

これらの著書は、日本の演劇史研究において重要な貢献を果たしています。特に、久保栄、菊田一夫、川上音二郎と貞奴、清水邦夫といった劇作家や演出家に関する研究は、高い評価を受けています。

近年の活動

近年も、日本演劇学会2019年度研究集会での講演や、文化庁、日本演出者協会、日本劇作家協会主催の研修セミナーでの講演など、精力的な活動を続けています。また、NPO法人地球ことば村主催の講演会では、芝居のことばと日常生活のことばの関係について考察するなど、演劇研究の裾野を広げる活動にも取り組んでいます。

井上理恵氏は、日本の近現代演劇研究において、その深い知識と情熱をもって、多大な貢献を続けている研究者です。今後の更なる活躍が期待されています。

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