鳥越文蔵

鳥越文蔵の業績と影響

鳥越文蔵（1928年8月28日 - 2021年4月5日）は、日本国文学界における重要な人物であり、特に日本近世演劇の研究にその名を刻んでいます。彼は早稲田大学の名誉教授として長いキャリアを持ち、坪内博士記念演劇博物館の館長を務めるなど、学問の発展に貢献しました。

生い立ちと教育

長崎県佐世保市に生まれた鳥越は、1955年に早稲田大学文学部演劇科を卒業後、同大学院で学び続けます。1958年に修士課程を修了し、翌年から早稲田大学の文学部に助手として勤務を開始しました。その後、助[[教授]]、教授に昇進し、1988年から1999年まで坪内博士記念演劇博物館の館長を務めました。彼の館長時代には、図書の複写に関する制度を導入するなど、現代的な運営手法を取り入れ、博物館の発展に尽力しました。

受賞歴と研究業績

彼の研究活動は評価され、多くの賞を受賞しました。特に、1992年には『元禄歌舞伎攷』により芸術選奨文部大臣賞を受賞し、1997年には紫綬褒章を受け取っています。近松門左衛門の浄瑠璃や能、歌舞伎に関する研究に注力し、特に近松門左衛門作の「出世景清」の全段復活上演に貢献したことが知られています。さらに、彼は歌舞伎学会の初代代表委員としても、多くの後進を育成し、演劇界の発展に寄与しました。

海外での活動

1962年、彼はドナルド・キーンの勧めにより、ケンブリッジ大学で教鞭を執るためイギリスに渡ります。その際、現地の研究者から「大英博物館にある古い書物を見てほしい」と依頼され、浄瑠璃本『越後国柏崎 弘知法印御伝記』を発見しました。この貴重な資料は、貞享2年（1685年）ごろに上演されたもので、彼の卓越した研究力を示す一例となっています。

鳥越文庫と地域文化への貢献

また、鳥越は自身の蔵書を佐渡市猿八に約2万冊寄贈し、「鳥越文庫」として知られる施設を設立しました。この取り組みは、文弥人形を通じて地域活性化を図る教え子の活動に感銘を受けた結果です。この文庫では演劇に関連する書籍だけでなく、多様なジャンルの書籍も扱っており、誰もが自由に利用できるように運営されています。

著作と研究活動

著書としては『近松門左衛門 虚実の慰み』や『元禄歌舞伎攷』などがあります。また、編著や校注においても数多くの作品を手掛け、古典文学研究において重要な役割を果たしました。特に『日本古典文学全集 近松門左衛門集』などは、多くの研究者に引用されており、その影響は現在も続いています。

最後に

2021年4月5日、埼玉県で鳥越文蔵はその生涯を閉じましたが、彼の業績や影響は、今もなお日本の演劇界に生き続けています。後進たちへの指導や父のような存在としての役割を果たした彼の姿勢は、多くの人々に深い感銘を与えています。

もう一度検索