井上禅定

井上 禅定の生涯と活動

井上禅定（1911年1月20日 - 2006年1月26日）は、日本の禅僧であり、東慶寺の住職及び相模工業大学の教授としても知られています。彼の思想は、禅と自然保護運動の融合によって表現され、後世に多くの影響を与えました。

幼少期から大学卒業まで

井上は神奈川県高座郡渋谷村に生まれました。彼は円覚寺派の東勝寺の禅僧の三男として育ち、父の転居により南足柄村の狩野極楽寺に引っ越しました。少年時代には、釈宗演の法話に感銘を受け、その影響を強く受けました。10歳の時には鎌倉へ移り、東慶寺の住職であった佐藤禅忠の弟子として禅の修行を始めました。

その後、神奈川県立湘南中学校から松本高等学校に進学し、東京帝国大学文学部印度哲学科に入学しました。ここでは辻直四郎と和辻哲郎から学び、後に彼の思想に大きな影響を与えることとなる哲学的基盤を築きました。井上は、宗教と哲学の交差点に立つような存在であり、彼の思想は多層的でした。

東慶寺住職としての活動

大学を卒業した後、井上は天龍寺で関精拙に弟子入りし、1941年には東慶寺の住職に就任しました。この年、彼は鈴木大拙と共に松ヶ岡文庫を創設し、文化の保存と研究の場としました。井上は戦争中に召集され、千葉県で部隊に所属しましたが、戦後は鎌倉に戻り、文庫の運営を続けました。

1945年には、大拙の友人である西田幾多郎が亡くなった際に、特別許可を得て鎌倉に戻り、その葬儀で読経を行いました。この葬儀をきっかけに、多くの文化人がこの寺を菩提寺とするようになりました。

戦後の活動

終戦後、井上は松ヶ岡文庫を財団法人として設立し、大拙の貴重な資料の保管と研究を進めました。さらに、環境保護活動にも積極的に参加し、1964年には鶴岡八幡宮裏の御谷騒動で、地域の保全に尽力しました。彼はまた、1970年の鎌倉市長選では、正木千冬を支持し、地域の革新市政に貢献しました。

1971年から1974年にかけては円覚寺派の宗務総長として、朝比奈宗源管長と共に教団を支えました。井上は晩年も鎌倉市の文化財保護や環境保全に力を注ぎ、その意志を貫きました。2006年、95歳で逝去するまで、彼は地域社会に対する深い愛情と、哲学的な思索を持ち続けました。

関心を示した思想

井上の宗教的な信念は、自然保護や環境問題に対する意識に結びついていました。彼は禅が持つ革命的な精神を重視し、現状の打破を求める力を見出していました。井上の言葉の中には、禅の教えと自然の調和を主張する姿勢が見受けられます。

著作活動と評価

彼の著作や共編著は、後世の研究者にとって貴重な資料となっており、井上の思想は、禅だけにとどまらず、環境問題へも広がりを見せています。井上禅定の存在は、現代における宗教者の役割や環境保護の重要性を考える上で、思い起こされるべき重要な人物であると言えるでしょう。

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