井上興治

井上 興治（いのうえ こうじ）氏は、1943年11月1日に生まれた日本の運輸技官です。長年にわたり、国の港湾整備や開発行政、技術研究に深く関与しました。

井上氏は、1965年に国家公務員採用上級（甲種）試験の土木分野に合格し、翌1966年に北海道大学工学部を卒業しました。同年、運輸省に入省し、キャリアの第一歩を第五港湾建設局で踏み出しました。

運輸省入省後、井上氏の職務経験は多岐にわたりました。1972年には科学技術庁に出向し、計画局計画課で専門職を務めました。その後、北海道開発局に異動し、1974年には港湾部港湾建設課、1975年には港湾部港湾計画課でそれぞれ開発専門官として、北海道の港湾インフラ整備計画に携わりました。再び運輸省に戻り、1975年には港湾局計画課の専門官となりました。

キャリアの幅を広げる中で、地方自治体での経験も積みました。秋田県開発局では、1977年に主席参事、1979年には環境整備課長として、地方の開発行政や環境対策に従事しました。中央省庁に戻ってからも、1981年に北海道開発庁港政課で開発専門官を務め、1983年には運輸省港湾局環境整備課の廃棄物対策室長として、港湾環境の保全に関する重要な課題に取り組みました。1986年には国土庁へ移り、大都市圏整備局の計画官として、広範な国土計画に関与しました。

主要なポストを歴任する過程で、1988年には運輸省港湾局付となった後、同省を一度離れ、北九州市港湾局長に就任しました。地方都市の港湾運営という重要な責任を担い、その手腕を発揮しました。その後、運輸省に復帰し、1990年に再び港湾局付となります。1991年には運輸省港湾局開発課長として、国の港湾開発政策の中核を担いました。北海道の開発行政にも再び関与し、1994年には北海道開発庁港政課長、1995年には北海道開発局港湾部長を務めました。

1997年には運輸省港湾技術研究所長に就任し、港湾関連技術の研究開発の推進に貢献しました。そして1998年、運輸省における技術系官僚の最高ポストの一つである大臣官房技術総括審議官（第2代）に昇進しました。これは、彼の長年にわたる港湾技術、開発行政、そして組織運営に関する深い知見と功績が高く評価されたことによるものです。

2000年に運輸省を退官した後も、井上氏はその専門性と経験を活かし、多方面で活動を続けました。まず、沿岸開発技術研究センターの理事長に就任し、沿岸域の技術開発や利用促進に尽力しました。2004年には日本海上起重技術協会の会長を務めるなど、関連技術分野の振興に貢献しました。

その後、活動の場を民間企業に移し、みらい建設工業の代表取締役社長を務め、建設業界における経営に携わりました。2007年には同社の会長に就任しています。また、退官後も専門分野への継続的な貢献を惜しまず、北海道倶楽部参与、沿岸技術研究センター顧問、海ロマン21副理事長、FLIPコンソーシアム顧問、底質浄化協会副会長、日本港湾協会理事、海洋深層水利用学会理事、海洋エネルギー・資源研究会主査など、港湾、海洋、開発、環境といった幅広い分野の各種団体の要職を歴任しました。さらに、母校である北海道大学大学院公共政策学連携研究部・教育部の外部評価委員会委員や、日本港湾協会名誉会員にも名を連ねています。

長年にわたる公共分野への貢献が認められ、2016年には瑞宝中綬章を受章しています。井上氏は、官民問わず様々な立場で日本の港湾整備、開発行政、そして関連技術の発展に尽くした人物です。

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