井上芳治

井上 芳治（いのうえ よしはる）は、1941年11月23日に兵庫県尼崎市に生まれ、2016年8月9日に逝去した日本の著名なランドスケープアーキテクトです。景観設計の専門家として多岐にわたるプロジェクトに携わり、環境設計株式会社を設立しました。

兵庫県立園芸高等学校を経て、1964年に東京農業大学を卒業。卒業後は東京コンサルタンツに入社し、キャリアをスタートさせました。その後、近代造園研究所の大阪事務所での活動に加わり、千里ニュータウンにおける公園や緑地の設計に携わるなど、造園設計の実務経験を積みました。

近代造園研究所大阪事務所の閉鎖に伴い、1968年には自身の設計事務所である環境設計株式会社を設立しました。同年、取締役として会社の経営に携わると同時に、日本造園設計事務所連合の活動にも参加し、業界全体の発展に貢献しました。翌1969年には代表取締役に就任し、長年にわたり会社の経営と設計実務のトップとして活躍しました。2007年に代表取締役を退任し取締役会長となり、2009年には取締役会長からも退いて顧問に就任しました。

専門家としての資格としては、技術士建設部門（都市及び地方計画）および登録ランドスケープアーキテクト（RLA）を取得しています。また、業界団体であるランドスケープコンサルタンツ協会（CLA）では関西支部長や副会長、顧問といった要職を歴任し、協会の運営やランドスケープコンサルタントの地位向上にも尽力しました。教育分野にも関わり、大阪芸術大学で非常勤講師として後進の指導にあたりました。

井上氏の代表的な業績は数多く、全国各地でその手腕を発揮しました。主なプロジェクトには以下のようなものがあります。

昆陽池公園（兵庫県伊丹市、1972年）： 自然を活かした広大な公園設計。
沖縄国際海洋博覧会会場船クラスター広場（沖縄県本部町、1975年）： 大規模な国際イベントにおける会場空間の創出。
大阪花博会場： メインゲートや会場サインの設計など、博覧会の顔となる部分のデザイン。
ジャパンフローラ2000淡路花博会場： 会場構想や全体のランドスケープ計画に加え、「兵庫県の庭（大地の景）」や「百段苑」といった具体的な空間の設計。
尼崎市阪神尼崎駅前再開発事業： 駅前広場中央公園の設計、噴水や滝、池、レストコーナーのデザインに加え、庄下川の再生、護岸デザイン、照明計画、祭りの復元構想など、都市空間全体の再生・活性化に関わる幅広い設計・計画。
その他： 大阪府営久宝寺緑地まいまい広場、東近江市河辺いきものの森、箕面川ダム・明治の森国定公園内の自然植生再生復元など。

これらの業績に加え、様々な評価や賞を受けています。第23回IFLA日本大会八幡屋公園基本計画コンペティションでは佳作を受賞。甲賀市みなくち子どもの森公園の設計により、2005年度ランドスケープコンサルタンツ協会賞奨励賞を受賞しました。また、遊具事故ゼロを目指した管理運営の実践は高く評価され、第23回都市公園等コンクール管理運営部門で国土交通大臣賞を受賞しています。さらに、第28回日本公園緑地協会北村賞も受賞するなど、その功績は広く認められました。

長年のランドスケープ分野への貢献が讃えられ、2009年には黄綬褒章を受章しています。井上芳治氏は、生涯を通じて都市や自然の中の空間デザインに情熱を注ぎ、機能性と芸術性を兼ね備えた多くの優れた景観を創造し、日本のランドスケープアーキテクチャの発展に大きく貢献しました。

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