井上長者館跡

井上長者館跡

井上長者館跡（いのうえちょうじゃやかたあと）は、茨城県行方市の井上に位置する古代居館の遺跡です。この遺跡は、航空写真による調査によって発見されたことから、その存在が広く知られるようになりました。特に地面の状況により、クロップマークやソイルマークとして認識された遺構が明らかになり、学術的な関心が高まっています。

立地と環境

井上長者館跡は、霞ヶ浦と北浦に挟まれた行方台地に位置しています。この台地は、標高約33メートルの平坦な地域であり、西側には霞ヶ浦に流れ込む小川、東側には北浦へ注ぐ山田川水系の谷があります。現在、遺跡は畑として利用されており、その地表における遺構は直接観察することができません。

発見の経緯

この遺跡が発見されたのは1962年（昭和37年）のことです。当時、地籍調査のために行われた航空撮影によって、畑の地表に南北約100メートル、東西約100メートルの二重正方形のラインが鮮明に写し出されました。これにより、遺構の存在が確認され、考古学的な評価が進みました。付近には「長者郭」という小字地名があり、古代からの瓦が出土することで知られています。また、高野家に伝わる古文書には、似た形状の居館跡が描かれた図面も含まれており、発見された遺構と一致する点が多く話題となりました。

他の例として、宮城県の内館館跡や鹿児島県の横瀬古墳など、航空写真で確認された居館および墓地遺跡もありますが、井上長者館跡もその一環として学術的に重要視されています。

発掘調査の結果

1989年（平成元年）から1990年（平成2年）にかけて、玉造町遺跡調査会が行った発掘調査において、遺構の全体像を把握するためのトレンチ調査が実施されました。航空写真の情報を元に、全方向で二重ラインが確認できる位置に試掘坑が設置され、その結果、幅約4メートルの逆台形を持つ二重の空堀が発見されました。この堀からは、奈良・平安時代の須恵器や瓦などの出土品があり、遺構の年代は8世紀から10世紀頃にさかのぼると考えられています。

発掘調査報告によると、遺構の外堀はほぼ正方形で、東西120.5メートル、南北119.72メートルと測定され、主軸は北東方向に18度傾いていることが示されました。特に、居館外と内部を結ぶ陸橋部分と思われる箇所では堀が見つからなかったことも明らかになり、古い文献との一致も確認されています。さらに、調査によって得られた資料からは、遺構の強い重要性が証明される結果となりました。

結論

井上長者館跡は、その歴史的意義において研究者や歴史愛好家の関心を集めており、今後の調査や研究によってさらなる理解が進むことが期待されています。古代の人々がどのように生活し、居館を築いたのかを探る手がかりになるでしょう。

もう一度検索