井伊直勝

井伊直勝の生涯と業績

井伊直勝（いい なおかつ）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した譜代大名であり、徳川家の家臣であった。彼は近江彦根藩の2代藩主であり、後に上野安中藩初代藩主としても知られる。直勝は、井伊直政の長男として生まれ、井伊氏の初代とされる。

誕生と初期の経歴

天正18年（1590年）、遠江国浜松にて生を受けた直勝は、早くからその運命を背負うことになる。慶長7年（1602年）、父の直政が関ヶ原の戦いにおいて受けた重傷が元で亡くなると、直勝は彦根藩主の地位を引き継ぎ、名を直継と改名した。慶長8年（1603年）からは、徳川家康の命により、西国防衛のための重要拠点である彦根城の築城に力を注いだ。1631年に完成した彦根城は、その後直継が心の拠り所として居を移すこととなる。

政権と内紛

若年であった直勝は、当初は家老たちに政務を任せていたが、家中の内部分裂が深刻化していった。家臣団内の対立は、父の直政からの影響を受けた者たちとの不協和音を生む結果となり、直勝自身はその調整に苦しんだ。家康の策略により、木俣守勝や鈴木重好が家老として補佐することとなったものの、内部対立は収まらず、悪化の一途を辿った。

家督の移譲

慶長19年（1614年）、大阪の陣が始まるにあたり、直勝は病弱なために江戸に留め置かれ、名代として直孝に井伊軍の大将を託すことになった。戦後、直勝は安中藩として新たに3万石を与えられ、改名して直勝と名乗ったが、その背景には家中の調整や権力の分割があった。 直勝と彼の家臣団の内部の対立から、直孝が家督を受け継ぐこととなり、直勝は隠居するに至った。

隠居生活と最期

寛永9年（1632年）、長男・直好に家督を譲り、隠居生活に入った直勝は、晩年も数奇な運命に翻弄され続けた。寛文2年（1662年）には、遠江掛川城にて病により亡くなり、享年73であった。直勝は病弱であったとの評判もあったが、その一方で直孝よりも長生きしたことは、彼の遺伝的な強さを示すかもしれない。彼の子孫は掛川から越後国与板に移り、与板藩として幕末まで存続した。

逸話

井伊直勝の築城の際、一つの逸話が残っている。彼が彦根城の天守の工事を進めていた時、工事が遅れ、側近が人柱を立てることを提案したが、直勝は頑として受け入れなかった。最終的に普請奉行の娘・菊が人柱として名乗り出ることになるが、直勝はその後の工事の進行を見届け、その背後には彼の機転があったとも言われている。このような逸話は、彼の意志の強さや、家臣たちとの絆の複雑さを物語っている。

系譜

直勝の父は井伊直政、母は徳川家康の養女で、松平康親の娘である。彼には正室として鳥居忠政の娘が、継室には中島新左衛門の娘がいた。直勝の長男である井伊直好は、後に歴史的な移封を果たしている。

以上のように、井伊直勝は早くから歴史の舞台に立ち、多くの困難を乗り越えてきた重要な人物である。その影響と貢献は、彼の子孫にも受け継がれ、歴史の一端を形成していった。

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