井藤半彌

井藤半彌の生涯と業績

井藤半彌（いとう はんや、1894年9月14日 - 1974年2月6日）は、日本の経済学者であり、特に財政学の分野で多大な貢献をしました。京都府京都市で生まれ、東京高等商業学校（現在の一橋大学）を卒業後、同大学で教鞭を執り、後に学長も務めました。彼の学術的な業績は、戦前・戦後の日本における財政政策の策定に大きな影響を与えただけでなく、多くの経済学者を育成しました。

学歴と初期のキャリア

井藤は、京都市立第一商業学校（現在の京都市立西京高等学校）を経て、1918年に東京高等商業学校本科を卒業しました。その後、1920年には同校専攻部貿易科を卒業。福田徳三教授に師事し、経済学への関心を深めました。1920年に東京商科大学（現在の一橋大学）の助手となり、その後、同大学附属商学専門部の講師を務めました。1922年からは、財政学の内池廉吉教授の下で研究を進めました。1935年には、東京商科大学から経済学博士号を授与されました。

海外留学と研究活動

1922年から、井藤はフランス、ドイツ、アメリカ合衆国へ留学しました。特にドイツでは、ライン・フリードリヒ・ヴィルヘルム大学ボン哲学部国家学科で学び、1923年から1925年までの間、研究に励みました。当時、東京高商の大学昇格に伴い、多くの教員が海外留学に出ており、井藤もその一人でした。留学中には、同僚の本間喜一、渡邉大輔、大塚金之助らと交流を深め、研究会や将棋を通じて親睦を深めました。

大学教員としてのキャリア

帰国後、1926年に東京商科大学附属商学専門部の教授兼東京商科大学助教授に就任し、1932年には同大学の教授となりました。1944年には東京商科大学予科長を務めました。戦後の1950年には日本学士院会員となり、1951年には一橋大学経済学部長、1955年には一橋大学学長に就任しました。1959年に一橋大学を退任し、名誉教授となりました。その後、青山学院大学の教授も務めました。

公職と社会貢献

井藤は、学術界だけでなく、政府や様々な団体の要職も歴任しました。1939年から1945年まで海軍経理学校で財政学の教授を務め、戦時中には大蔵省の戦時財政研究委員や参与、戦後には内閣の中央企業経理調査委員会委員などを務めました。また、自治庁参与、大蔵省税制特別調査会会長、日本ホッケー協会理事、大学基準協会常任理事など、多岐にわたる分野で活躍しました。これらの活動を通じて、井藤は日本の財政制度や教育制度の発展に大きく貢献しました。

門下生と著書

井藤の門下からは、木村元一、大陽寺順一、新川士郎など、多くの著名な経済学者が輩出しました。また、木村栄一、河合斌人、西堀正弘、金井多喜男など、実業界や他の分野で活躍する人材も数多く育てました。

井藤は、多数の著書を執筆しており、主な著書には『財政學原理』、『國家財政概論』、『租税原則學説の構造と生成』などがあります。これらの著書は、財政学の分野における重要な文献として、現在でも広く読まれています。

受章

井藤は、その功績により、1974年に正三位勲一等瑞宝章を受章しました。

井藤半彌は、学問の世界だけでなく、政府や社会においても多大な貢献をした人物であり、その業績は現代においても高く評価されています。

もう一度検索