亜鈴状星雲

亜鈴状星雲（M27、NGC 6853）

こぎつね座の方向、地球からおよそ1,235光年の距離に位置する亜鈴状星雲は、その名の通り、フィットネス器具の鉄亜鈴に似た特徴的な形をした惑星状星雲です。学術名としてはM27やNGC 6853としても知られています。この天体は、恒星がその一生の終わりに外層のガスを放出したもので、中心には白色矮星が残されています。

特徴的な見え方と観測

亜鈴状星雲は、アマチュア天文家にとって非常になじみ深く、人気の高い観測対象の一つです。双眼鏡クラスの機材でも容易にその姿を捉えることができるため、手軽に楽しめる天体として推奨されます。

望遠鏡の口径によって、見える姿は変化し、観測の楽しみが増します。

口径5cm程度：高倍率を適用すると、円の両側がわずかに削られたような楕円形に見えます。
口径8cm程度：日本の銀行の地図記号にも似た、よりはっきりとした「亜鈴」の片側のような形状が視認できます。
口径15cm程度：星雲の周囲に散らばる微かな星々の中で、亜鈴状の本体がくっきりと浮かび上がって見え始めます。
口径30cm程度：星雲内部の濃淡や、淡くなっている部分の存在が明らかになります。星雲の手前にある微光星や、非常に微弱な中心星も捉えることが可能になります。
* 口径40cm以上：星雲の繊細な構造や濃淡、前景の微光星がさらに鮮明に見え、非常に見事な眺めを楽しむことができます。

また、この星雲は静止しているわけではなく、時間とともに膨張しています。観測によると、100年あたり約6.8秒角の割合で外側へ広がっていることが分かっています。この膨張率を逆算すると、亜鈴状星雲を形成するガスが膨張を開始したのは、およそ3000年から4000年以上前の出来事であると考えられています。

発見とその後の研究

亜鈴状星雲は、惑星状星雲として初めて発見された記念すべき天体です。その発見は1764年、フランスの天文学者シャルル・メシエによってなされました。メシエは、この天体を自身の有名なカタログであるメシエカタログにM27として登録し、「星を含まない星雲で、焦点距離3.5フィートの望遠鏡でよく見える楕円形。直径4分角」と記録しています。

その後も多くの天文学者によって観測・研究が行われました。例えば、ウィリアム・ハーシェルは1785年の観測記録の中で、その形状について「とくに大きいわけではないが、おそらく非常に広がった二重の星の層が我々の方向を向いているのだろう」と推測しました。彼はこの星雲を複数の部分に分けられると考え、分解できない部分、色がついていないが分解されない部分、そして銀河の部分が含まれているのではないかと記しており、現在の惑星状星雲という理解とは異なる見方をしていました。

また、ロス卿もこの天体を観測し、「星には分けられないが、分かれそうな気配もある」と述べています。これは、現在の研究では星雲本体ではなく、その手前に位置する微光星を指していると考えられています。

亜鈴状星雲は、このように早い段階から天文学者の注目を集め、その特異な形状や性質から、惑星状星雲というカテゴリーが確立される上で重要な役割を果たしました。現在でも、その明るさと見やすさから、多くの天文学研究および一般向けの観測において重要な天体であり続けています。

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