亡命スカウト

亡命スカウトとは

亡命スカウトとは、戦争や政変などにより母国を離れざるを得なくなった人々によって組織されるボーイスカウト・ガールスカウトの運動体のことを指します。これは、海外在住者のためのスカウティング組織とは異なり、政治的な理由で母国を追われた人々が、亡命先でスカウト活動を続ける形態です。

背景

スカウティング運動は、時に政治的な圧力にさらされることがあります。特に、権威主義的な政権下では、スカウティングが思想統制の対象となり、活動が制限されたり、禁止されたりすることがあります。近年では、キューバ、ラオス、ミャンマー（ビルマ）、中華人民共和国などがその例として挙げられます。

このような状況下で、母国を離れたスカウトたちは、亡命先で新たなスカウト組織を立ち上げたり、既存の組織に合流したりすることで、スカウティングの精神を継承しようとします。

各地の活動

世界各地には、様々な亡命スカウトの活動が見られます。

オーストラリア: ビクトリア州には、ヴィクトリア民族スカウト・ガイド協会（ESGAV）という団体があります。ウクライナ人、エストニア人、ハンガリー人、ポーランド人、ラトビア人、リトアニア人、ロシア人の7民族によって構成され、ベンチャースカウト・ローバースカウト年代のためのキャンプを毎年開催しています。
アメリカ: アメリカ連盟では、亡命隊が亡命先のスカウト組織として機能することが多く、ニューヨークのエストニア人亡命スカウト隊やカリフォルニアの亡命アルメニア人隊がボーイスカウトアメリカ連盟に地方連盟として登録されています。
ドイツ: ドイツには、アフガニスタン出身のスカウト・ガイドによって設立されたアフガニスタンスカウト協会が存在します。同協会は、ドイツ引退スカウト共同体と協力関係にあり、国際スカウト・ガイド共同体に加盟しています。会長は、ボーイスカウトアフガニスタン連盟の元副理事長であるSaid Habibが務めています。

課題と展望

全体主義国家を母国とする亡命スカウト集団の中には、世界スカウト機構（WOSM）が自分たちを承認しないことに対する不満を持つ人々もいます。そのため、WOSMではなく、独立スカウト世界連盟（WFIS）に参加する集団も見られます。

亡命スカウトの活動は、スカウティングの普遍性と、困難な状況下でもその精神を維持しようとする人々の努力を示すものです。今後も、亡命スカウトの活動は、スカウティング運動の多様性と包容性を高める上で重要な役割を果たすことが期待されます。

参考文献

Victor M. Alexieff (September 1982). “The Other Ones - Scouts in Exile”. SOSSI Journal XXXVII (9).
The Undaunted (English): Piet J. Kroonenberg book
The Undaunted II (English): Piet J. Kroonenberg
Kroonenberg, Piet J. (1998). The Undaunted - The Survival and Revival of Scouting in Central and Eastern Europe.

関連項目

国連ボーイスカウト
難民キャンプにおけるスカウティング
独立スカウティングとスカウティング類似組織
* 世界友好基金

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