交差反転式ローター

交差反転式ローター (Intermeshing Rotors)

交差反転式ローターは、2つの回転翼が交差し、反対の方向に回転することで反動トルクを打ち消すヘリコプター技術の一形態です。この方式は時に“シンクロプター”とも称され、開発者であるアントン・フレットナーの名を冠した“フレットナーシステム”としても知られています。

歴史的背景

この技術の起源は第二次世界大戦時に遡ります。ナチス・ドイツは艦載用の対潜哨戒機としてフレットナー Fl 282を開発し、戦争中の航空機技術の進化に寄与しました。その後、冷戦期にはアメリカのカマン社により、同様の特性を持つヘリコプターが開発されました。カマンの製品は、従来のテールローター式と比較して高い自律安定性を実現し、出力を効率的に利用できるため、強力な浮上力を持っています。

構造と特性

交差反転式ローターは、二重反転式やタンデム式などの他の2ローター形式と同様に、メインローターの回転から発生する反動をキャンセルし、テールローターを不要にします。これにより、エンジン出力を全てメインローターに割り当てられるため、出力の無駄を省くことが可能です。

この方式は、ローター回転軸やトランスミッションの構造が比較的シンプルで、お手入れが容易であることが特長です。また、ローターの回転面が完全に重ならないため、円盤荷重を軽減しやすいという利点も持っています。タンデム式の一因である、特定の飛行速度で一方のローターが他方の後流に巻き込まれることによるバランスの損失を防ぐことができます。

ただし、欠点としては横向きの揚力を打ち消すためのパワーロスや、交差するローター同士の干渉による損失、同調不良時のリスクが挙げられます。特に、交差反転式はローターの衝突の危険性を伴うため、非常に高い精度での回転の同調が要求されます。

現在の応用例

2018年3月時点で量産中のカマン K-MAXは、空中での荷物運搬に特化した設計を持ち、建設業や林業等の分野で非常に重要な役割を果たしています。さらに、交差反転式ローターは科学玩具などの小型機器にも応用されており、代表的な例として「空中戦機AIRBOTS」や学研の「手回し発電ヘリ クロスコプター」が挙げられます。

このように、交差反転式ローターは効率的なトルクキャンセルが可能で、高い機動性と安定性を兼ね備えているため、様々な場面でその特性を生かした利用が進められています。

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