交差弾力性

交差弾力性（Cross elasticity）

交差弾力性とは、ある財の価格が1%変化したときに、別の財の需要量が何%変化するかを示す指標です。需要の交差弾力性とも呼ばれ、2つの財の関係性を分析する上で重要な概念となります。

交差弾力性の定義と計算

財Aの価格の変化（ΔpA）に対して、財Bの需要量（qB）がどれだけ変化したか（ΔqB）を測る場合、交差弾力性（ηBA）は以下の式で表されます。


ηBA = (ΔqB / qB) / (ΔpA / pA) = ((qB' - qB) / qB) / ((pA' - pA) / pA)


ここで、pA'は財Aの新しい価格、qB'は価格変化後の財Bの需要量を表します。

交差弾力性の解釈

交差弾力性の符号は、2つの財の関係性を示します。

代替関係（ηBA > 0）:
財Aの価格が上昇すると、財Bの需要が増加します。例えば、マーガリンの価格が上昇すると、バターの需要が増える場合などが該当します。
補完関係（ηBA < 0）:
財Aの価格が上昇すると、財Bの需要が減少します。例えば、映画チケットの価格が上昇すると、ポップコーンの需要が減る場合などが該当します。
独立関係（ηBA = 0）:
財Aの価格変化が財Bの需要に影響を与えません。例えば、自動車の価格が上昇しても、パンの需要は変わらない場合などが該当します。

交差弾力性の歴史

交差弾力性の概念は、アルフレッド・マーシャルによって最初に提唱されました。初期の研究では、ある財の価格変動が競合する財の価格に与える影響を分析するために用いられました。有名な事例として、セロファンの誤謬のケースがあります。デュポンのセロファンの価格は、競合他社の価格とは独立して変動しており、セロファンと競合他社の財は競合関係にないとされました。この分析を通じて、価格変動はコストの変化と需要の変化の両方から生じるため、価格変動から単純に競争関係を推察できないことが示されました。

弾力性の分類

交差弾力性の絶対値の大きさによって、以下のように分類されます。

弾力的（|ηBA| > 1）:
財Aの価格変化率よりも財Bの需要変化率が大きい。
非弾力的（|ηBA| < 1）:
財Aの価格変化率よりも財Bの需要変化率が小さい。
単位弾力的（|ηBA| = 1）:
財Aの価格変化率と財Bの需要変化率が等しい。

代替率

代替関係にある財同士の場合、一方の財からもう一方の財への需要の切り替わりやすさを示す代替率は、交差弾力性と需要の価格弾力性、そしてそれぞれの財の需要量の比率を用いて計算されます。

交差弾力性の活用

交差弾力性は、企業が価格戦略を立てる上で重要な情報となります。自社製品と競合製品、あるいは補完製品との関係性を分析することで、価格設定が需要に与える影響を予測し、最適な価格戦略を策定することができます。また、新製品開発やマーケティング戦略の立案にも役立ちます。

例えば、ある製品の価格を下げた場合、競合製品の需要がどれだけ減少するかを予測したり、補完製品の需要がどれだけ増加するかを予測したりすることができます。これらの予測に基づいて、売上高を最大化するための戦略を立てることが可能になります。

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