交響曲第3番 (ポポーフ)

ガヴリイル・ポポーフの《交響曲第3番》作品45は、1939年から1946年にかけて作曲された、弦楽オーケストラのために書かれた作品です。『英雄的』という副題を持ち、演奏時間は約55分に及び、これはポポーフが手がけた交響曲の中で最も規模の大きなものとなっています。

作曲の経緯

ポポーフは、先に発表した交響曲第1番が「形式主義的」であるとして当局から公的な非難を浴び、その上演を禁止されるという苦境に立たされました。これにより、彼は生計を維持するため、しばらくの間、映画音楽の作曲に専念せざるを得なくなります。

1939年9月17日の彼の日記からは、当時エシフィル・シューブが監督したスペイン内戦に関するドキュメンタリー映画『Испания』の音楽を担当していたことが伺えます。ポポーフはこの映画音楽を基に、演奏会用の組曲として編曲する作業に着手しました。当初の構想は、スペインでの様々な出来事を題材とした弦楽合奏のための合奏協奏曲として作品を形作るというものでした。

しかし、第1楽章が完成した時点で、この計画は一時的に保留されます。それから5年の歳月を経て、作品の名称を合奏協奏曲から交響曲第3番へと変更し、作曲が再開されました。そして、その2年後の1946年9月には全曲が完成を迎えます。初演は翌年、1947年1月31日にモスクワで行われました。

発表当時の評価と政治的背景

この交響曲第3番が発表される前年、ポポーフは愛国的なテーマを持つ映画音楽から編曲した交響曲第2番によってスターリン賞を獲得しており、かつて「形式主義者」とされた汚名を返上し、名誉を回復していました。そのため、この交響曲第3番も発表当初は好意的な評価を受けます。ポポーフ自身の日記によると、彼の師であったウラディーミル・シチェルバチョフは、この作品をポポーフの「最大の業績」であると高く評価したと記されています。

スターリン賞の選考過程で、交響曲第3番も候補として検討された時期がありましたが、最終的には候補から外されました。そして、その翌年である1948年、ソビエト音楽界に暗い影を落とした悪名高いジダーノフ批判により、ポポーフは再び「形式主義者」として名指しで批判されることとなります。ソビエト作曲家同盟の第一回総会の決定により、彼は事実上のブラックリストに載せられ、創作活動は再び大きな制約を受けることになりました。

楽曲構成と近年の状況

この交響曲は5つの楽章から構成されています。スペイン内戦の記憶を深く反映した「英雄的」な性格を持ち、特に力強い描写が見られる部分や、約12分に及ぶスペイン舞曲風の箇所が含まれています。各楽章のタイトルと速度指定は以下の通りです。

Intrada. Andante maestoso e molto espressivo
Allegro con fuoco, quasi presto
Prestissimo
Largo espressivo, molto cantabile e sempre con moto
* Presto impetuoso

ポポーフの交響曲は1961年から1989年にかけて複数録音されましたが、交響曲第3番は、他の1曲とともに長らく未出版の状態が続いていました。しかし、2008年になって、サンクトペテルブルク国立アカデミー交響楽団による初めての録音が行われ、ようやくこの重要な作品が広く聴かれる機会を得ました。

交響曲第3番は、ポポーフの音楽的な力強さを示すと同時に、当時のソ連における芸術と政治の複雑な関係に翻弄された作曲家のキャリアを象徴する作品と言えるでしょう。

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