ガヴリイル・ポポーフ

ガヴリイル・ニコラーエヴィチ・ポポーフ

ガヴリイル・ニコラーエヴィチ・ポポーフ（1904年9月12日 - 1972年2月17日）は、ロシア帝国ノヴォチェルカスクに生まれ、ソビエト連邦時代に作曲家として活動しました。

彼は1922年から1930年にかけてレニングラード音楽院で学び、著名な教師であるニコラーエフ、シテインベルク、ウラディーミル・シチェルバチョフらに師事しました。作曲家としてのキャリア初期は、アルノルト・シェーンベルクに献呈されたピアノ曲《表現》作品1にも見られるように、フェルッチョ・ブゾーニや新ウィーン楽派の影響を強く受けた革新的なスタイルを持っていました。その大胆な才能は同時代のドミートリイ・ショスタコーヴィチにも匹敵すると評され、特に《室内交響曲》作品2や、無調的な傾向を持つ《交響曲第1番》作品7は、当時の音楽界でセンセーショナルな成功を収め、進歩的な作品として広く認知されました。

しかし、ショスタコーヴィチと同様に、ポポーフもソビエト当局との間で困難に直面することになります。こうした体制からの圧力や制約を受ける中で、彼の音楽語法は徐々に伝統的なスタイルへと変化していきました。この時期以降の作品には、体制によって推奨された社会主義リアリズムの影響が見られ、日常生活の描写や共産党の英雄を称賛するような内容が盛り込まれることが多くなりました。例えば、《交響曲第2番》作品39は「祖国」、《交響曲第4番》作品47には「わが祖国の栄光」という副題が付されており、合唱曲には「同志の讃歌」のような題名の作品があります。

私生活ではアルコール依存症に苦しんだ時期もありましたが、作曲活動は継続され、多数の管弦楽曲を生み出しました。最終的には6曲の交響曲を完成させています。また、ポポーフは多作な映画音楽の作曲家としても知られており、多くの映画作品に音楽を提供しました。

主要作品（一部抜粋）

交響曲

交響曲第1番 作品7 (1935)
交響曲第2番「祖国」 作品39 (1943)
交響曲第3番「英雄」（または「スペイン」） 作品45
交響曲第4番「わが祖国の栄光」 作品47 (1949)
交響曲第5番「田園」 作品77 (1956)
交響曲第6番「祝祭」 作品99 (1969)

協奏曲

ピアノ協奏曲 作品24
チェロ協奏曲 作品71 (1953)
オルガン協奏曲 (1970)

室内楽曲

室内交響曲 作品2 (1927)（フルート、トランペット、クラリネット、ファゴット、ヴァイオリン、チェロとコントラバスのための七重奏曲）
弦楽四重奏のための交響曲 作品61 (1951)

ピアノ曲

2つの小品 作品1 (1925)
ジャズ組曲 作品5

合唱曲

カンタータ「勝利へ」(1944)
カンタータ「レーニン詩曲」 作品58 (1950)

映画音楽

チャパエフ (1934)
ベジン・メドウ (1937)
転回点 (1945)
炎の年月の物語 (1961)
コサック (1961)
* 塩の皇帝の物語 (1966)

ポポーフの生涯と作品は、ソビエト連邦という特異な政治・文化環境下で芸術家が直面した葛藤や変化を色濃く反映しています。初期の革新性と後期の伝統主義、そして多岐にわたるジャンルでの創作活動は、彼の音楽家としての複雑な側面を示しています。

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