ウラディーミル・シチェルバチョフ

ウラディーミル・ウラディーミロヴィチ・シチェルバチョーフは、1889年1月24日にポーランドのワルシャワで生まれ、1952年3月5日にソ連のレニングラードで没した、ロシアの作曲家であり、優れた音楽教師としても知られる人物です。

彼の初期の教育は人文科学に及び、1906年から1910年にかけてペテルブルク大学で法律や歴史、言語を学びました。その後、音楽へと専門を移し、ペテルブルク音楽院に入学。ここでは、高名な作曲家であるマクシミリアン・シテインベルクのクラスで作曲を専攻し、1914年まで集中的な指導を受けました。シテインベルク以外にも、当時の音楽界で重要な役割を果たしていたアナトーリ・リャードフやヤーセプス・ヴィートリスからも貴重な教えを受けています。音楽院での研鑽を積む一方で、シチェルバチョーフは実演家としての経験も積みました。彼は、セルゲイ・ディアギレフ率いる世界的に有名な劇団などで、ピアニストやコンサートマスターとして舞台芸術の現場に深く関わりました。

第一次世界大戦が勃発すると、シチェルバチョーフは1914年から1917年まで軍の後方勤務部に動員されました。戦後は、ロシア革命後の社会で音楽分野の要職を務めるようになります。1918年から1920年までモスクワのペレドヴィジニー劇場の音楽部門管理者として活動。さらに1918年から1923年にかけては、ソ連啓蒙人民委員部（ナルコムプロス）の音楽部門管理者という重要なポストに就き、当時の音楽行政を担いました。この時期には、教育者としても活動を開始し、大学で講師を務めています。

シチェルバチョーフの教育者としてのキャリアは輝かしく、多くの著名な音楽家を育てました。彼は特に音楽院での指導に力を入れ、レニングラード音楽院では1923年から1930年、そして再び1946年から1948年という二つの期間にわたって教授を務めました。また、トビリシ音楽院でも教授として教鞭をとっています。彼の門下からは、ボリス・アラポフ、ワシーリー・ヴェリカノフ、エフゲニー・ムラヴィンスキー（指揮者として特に有名）、ガヴリイル・ポポーフ、ミハイル・チュラキといった、ソ連および世界の音楽界で活躍する人材が数多く輩出されました。

作曲家としてのシチェルバチョーフは、多岐にわたるジャンルで精力的に創作活動を行いました。舞台作品としては、未完に終わった歌劇《アンナ・コロッソワ》（1939年着手）や、オペレッタ《Tabachny Kapitan》（1943年）があります。管弦楽曲においては、合計5曲の交響曲を作曲しており、中には独唱や合唱を伴う声楽交響曲（1925年、1935年の《イジョールスカヤ》など）や、標題的な作品（1931年の「交響組曲」、1935年の《イジョールスカヤ》、1948年初稿/1950年改訂稿の《ロシア》など）が含まれます。また、同名の映画のために作曲した音楽を基にした管弦楽組曲《雷雨》（1934年）や《ピョートル大帝》（1939年）も広く知られています。室内楽曲の分野では、7つの楽器と声楽、踊り手のための《九重奏曲》（1919年）が彼の代表作の一つとされており、他に弦楽四重奏のための組曲（1939年）などがあります。このほか、2曲のピアノ・ソナタを含む様々なピアノ曲、そして多数の優れた芸術歌曲を残しています。

ワルシャワで生を受け、レニングラードでその生涯を終えたウラディーミル・シチェルバチョーフは、作曲家、教育者、そして音楽行政官という三つの側面から、20世紀前半のソ連音楽界に確かな足跡を残しました。

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