交響曲第4番 (メンデルスゾーン)

メンデルスゾーン交響曲第4番イ長調作品90「イタリア」

フェリックス・メンデルスゾーンの交響曲第4番イ長調作品90、通称「イタリア」は、彼の代表作の一つであり、その明るく躍動的な音楽は多くの人々に愛されています。この曲は、メンデルスゾーンが1830年から1831年にかけてイタリア旅行中に着想を得て作曲されました。

概要

メンデルスゾーンは生涯で17曲の交響曲を作曲しましたが、初期の12曲は弦楽合奏のための習作的なもので、番号付きの交響曲は5曲のみです。交響曲第4番は、出版順では4番目ですが、作曲順では第1番、第5番に次いで3番目に完成しました。この曲は、イタリア旅行中に作曲が開始されたため、「イタリア」という愛称で呼ばれています。

この曲の特徴は、躍動的なリズム、叙情性と熱狂の交錯、長調と短調の対比による明暗の表現です。メンデルスゾーンの交響曲の中でも特に人気が高く、親しまれています。長調で始まり、同主短調で終わるという構成も特徴的です。最終楽章にはイタリアの舞曲であるサルタレッロが取り入れられていますが、それ以外は具体的なイタリアの音楽素材は使用されていません。

作曲の経緯

メンデルスゾーンは1830年10月から1831年4月にかけてイタリアを旅行し、ローマでは謝肉祭や教皇グレゴリウス16世の就任式を目撃しました。この旅行中に曲の着想を得て作曲を開始しましたが、旅行中に完成させることはできず、一時中断されました。1832年11月、ロンドンのフィルハーモニック協会から作曲依頼を受け、未完だったこの曲を提出することに決め、1833年1月に作曲を再開し、同年3月13日に完成しました。初演は同年5月13日、メンデルスゾーン自身の指揮で行われました。

未完に終わった改訂

初演は好評でしたが、メンデルスゾーンは自己批判が厳しく、作品を何度も改訂する傾向がありました。交響曲第4番も例外ではなく、初演後すぐに改訂作業を始めました。しかし、メンデルスゾーンは改訂を完成させることなく亡くなり、初演時の楽譜を元に、指揮者・作曲家のユリウス・リーツが整理したものが広く知られています。

初演の翌年、1834年にフィルハーモニック協会はモシェレスの指揮で再演を行いました。メンデルスゾーンはモシェレスから再演の知らせを受け、改訂作業を始めました。第2～4楽章は1835年2月までに改訂を終えましたが、第1楽章は大幅な改訂が必要と考えていたようで、手付かずのまま終わりました。その後、1840年に協会側との間でやり取りがありましたが、改訂は進められることはありませんでした。

メンデルスゾーンの死後、1851年にリーツが1833年版の自筆譜を整理・校訂して出版し、現在広く知られている楽譜となりました。第2～4楽章の「1834年版」は、近年クリストファー・ホグウッドによって校訂された楽譜が出版され、演奏されるようになっています。

楽器編成

フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦五部。

構成

全4楽章、演奏時間は約24分です。

第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ - ピウ・アニマート・ポコ・ア・ポコ
イ長調、8分の6拍子、ソナタ形式。
木管の軽快な序奏に乗り、ヴァイオリンが生き生きとした第1主題を提示します。第1主題の動機が展開された後、ホ長調の第2主題がファゴットとクラリネットによって提示されます。展開部では、提示部の経過句から派生した新しい主題によるフーガが展開されます。コーダでは、新たな旋律と展開部の主題、第1主題の動機が組み合わされます。

第2楽章アンダンテ・コン・モート
ニ短調、4分の4拍子、ロンド形式。
呼びかけるような音型に続き、木管が素朴で愁いを帯びた旋律を奏でます。中間部はニ長調です。

第3楽章コン・モート・モデラート
イ長調、4分の3拍子、三部形式。
穏やかな曲調で、メヌエットに近い楽章です。主部はドイツの民族舞曲を思わせる主要主題で始まります。中間部はホルンの信号で始まり、ヴァイオリンとフルートが上行形の音型を奏でます。

第4楽章サルタレッロ：プレスト
イ短調、4分の4拍子、自由なロンド形式。
「サルタレッロ」とは、ローマ付近の民衆に流行した舞曲のこと。熱狂的な雰囲気で展開し、途中でなめらかな旋律がタランテッラのリズムに乗って現れます。最後はイ短調で激しく終わります。

著名な引用、編曲

ポピュラー音楽: アポロ100が、第1楽章の一部をアレンジした『Mendelssohn's 4th』をリリースしました。
接近メロディ: 神戸電鉄や小田急多摩線黒川駅の接近メロディに第1楽章のアレンジが用いられています。

この交響曲は、メンデルスゾーンの才能と、イタリアの風景から受けたインスピレーションが融合した傑作です。その美しい旋律と躍動的なリズムは、聴く人々に感動を与え続けています。

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