ユリウス・リーツ

ユリウス・リーツ：保守的ながらも多才な音楽家

ユリウス・リーツ（August Wilhelm Julius Rietz, 1812年12月28日 - 1877年9月12日）は、19世紀のドイツ音楽界において、指揮者、チェリスト、作曲家として重要な役割を果たしました。彼は、特にフェリックス・メンデルスゾーンとの親交が深く、その影響を受けながらも、独自の音楽性を確立しました。

生涯

リーツは、ベルリンでプロイセン王立宮廷楽団のヴァイオリニストを父に生まれました。兄のエドゥアルトもヴァイオリニスト・指揮者であり、メンデルスゾーンと親しかったことが、彼の音楽家としての道に大きな影響を与えました。幼少期からチェロと作曲を学び、16歳でプロイセン王立劇場管弦楽団に入団。メンデルスゾーンの紹介で、デュッセルドルフ劇場の指揮者となり、その後、音楽監督に昇進しました。

1847年にはライプツィヒに移り、ライプツィヒ劇場の楽長、ライプツィヒ・ジングアカデミーの指揮者を務めました。さらに、ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者、ライプツィヒ音楽院の教員にも就任し、ライプツィヒの音楽界を牽引しました。バッハ協会の事務局長として、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの作品の校訂にも尽力しました。1860年にはドレスデンの宮廷楽長に就任し、ドレスデン王立音楽院の芸術監督も務め、ザクセン王国音楽総監督にも任命されました。

音楽的特徴と作品

リーツの音楽は、メンデルスゾーンの影響を受けつつも、より保守的な傾向を持っていました。彼は、新ドイツ楽派の革新的な音楽とは一線を画し、古典的な形式美を重んじました。彼の作品は、歌劇、劇付随音楽、合唱曲、リート、交響曲、序曲、協奏曲、室内楽曲など多岐にわたります。

主要作品

歌劇: 『海賊』、『ゲオルク・ノイマルクとガンバ』、『イェリーとベーテリーまたは異国の娘たち』
序曲: 『ヘーローとレアンドル 作品11』、『喜劇序曲 作品53』
交響曲: 第1番 ト短調 作品13、第2番 イ長調 作品23、第3番 変ホ長調 作品31
協奏曲: クラリネット協奏曲 ト短調 作品29、オーボエ小協奏曲 ヘ短調 作品33

業績と影響

リーツは、指揮者、作曲家としての活動に加えて、教育者としても多くの才能を育成しました。ヴォルデマール・バルギール、ザロモン・ヤーダスゾーン、アーサー・サリヴァン、フーゴ・リヒャルト・ユンクストらが彼の門下から輩出されています。また、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社の『メンデルスゾーン全集』の監修者として、メンデルスゾーンの作品の校訂にも貢献しました。彼の業績は、1859年にライプツィヒ大学から名誉博士号が授与されたことからも窺えます。

まとめ

ユリウス・リーツは、メンデルスゾーンの後継者として、19世紀ドイツ音楽界において重要な役割を果たしました。彼の音楽は、古典的な形式美を重んじ、新ドイツ楽派とは異なる独自のスタイルを確立しました。また、教育者として多くの才能を育成し、メンデルスゾーン作品の校訂にも貢献するなど、多岐にわたる活動を展開しました。

参考文献

Paul David. (1883) “Rietz, Julius.” In George Grove, ed., A Dictionary of Music and Musicians (A.D. 1450-1883), Vol. III, 132-133. London: Macmillan.
Moritz Fürstenau. (1889) “Rietz, Julius”. In: Allgemeine Deutsche Biographie (ADB). Band 28, pp.603-606. Leipzig: Duncker & Humblot.
Herbert Zimmer. (1943) Julius Rietz. Dissertation, Friedrich-Wilhelms-Universität zu Berlin.

外部リンク

ユリウス・リーツの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト

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