交響曲第6番 (パーシケッティ)

ヴィンセント・パーシケッティ：交響曲第6番 作品69

ヴィンセント・パーシケッティ（Vincent Persichetti, 1915-1987）による交響曲第6番 作品69は、「Symphony for Band」という副題が示す通り、吹奏楽のために書かれた重要な作品です。この分野の古典的なレパートリーとして確立されており、その音楽的な完成度と演奏効果の高さから、プロフェッショナルからアマチュアまで、世界中の多くの吹奏楽団によって頻繁に演奏されています。

本作は、1956年にアメリカ合衆国のセントルイス・ワシントン大学吹奏楽団からの委嘱を受けて作曲されました。同年内に同楽団によって初演が行われ、瞬く間に吹奏楽の世界に広まっていきました。この曲は、単に既存の管弦楽曲を吹奏楽用に編曲したものではなく、吹奏楽という編成固有の響きや表現力を最大限に引き出すように緻密に設計されており、その後の吹奏楽オリジナル作品の発展にも大きな影響を与えたと言われています。

楽器編成

この交響曲は、以下のような規模の大きな吹奏楽編成のために書かれています。管楽器に加え、打楽器セクションが作品全体において極めて重要な役割を担っており、単なるリズムや効果にとどまらず、音楽的な動機提示や展開においても不可欠な要素となっています。

ピッコロ
フルート 2
オーボエ 2
E♭クラリネット
B♭クラリネット 3パート
アルト・クラリネット
バス・クラリネット
ファゴット 2
アルト・サクソフォーン 2
テナー・サクソフォーン
バリトン・サクソフォーン
コルネット 3
トランペット 2
ホルン 4
ユーフォニアム
トロンボーン 3
チューバ
打楽器奏者 3名（ティンパニを含む）

楽曲構成

楽曲は伝統的な四楽章構成を採っており、全演奏時間はおよそ15分程度と比較的に短くまとまっています。各楽章は対照的な性格を持ちながらも、全体の統一性が保たれています。

1. 第1楽章 アダージョ - アレグロ
緩やかなテンポによる序奏で開始され、主部へと移行するソナタ形式です。序奏に現れる特徴的な動機は、その後の主部にも関連付けられて展開され、楽章全体に緊密な構造を与えています。アダージョの部分は4分の4拍子、主部のアレグロは4分の2拍子となります。

2. 第2楽章 アダージョ・ソステヌート
静かで内省的な楽章です。3分の2拍子による三部形式で書かれており、その主要な主題は、作曲者自身が作曲した聖歌「Round Me Falls the Night（夜よ、我を囲めり）」に基づいています。厳かな響きと深い情感が特徴です。

3. 第3楽章 アレグレット
軽快でリズミカルなスケルツォ楽章です。8分の6拍子を基本とする三部形式ですが、より拡大されたA-B-A-B-Aのような構造を持っています。冒頭に現れる旋律的な楽想と、中間部で提示される4分の2拍子のように感じられる対照的なリズムを持つ楽想が交互に現れ、楽章に活気を与えています。

4. 第4楽章 ヴィヴァーチェ
急速なテンポによる終楽章です。自由なロンド形式で構成されており、先行する各楽章から主要な主題や動機が回想される場面が多く見られます。これにより、全曲の統一感がより一層高められています。エネルギッシュな展開ののち、終結部では全12の半音が用いられた印象的な響きの和音によって、力強く曲を閉じます。

この交響曲第6番は、パーシケッティの管楽作品における傑作の一つとして、現代吹奏楽のレパートリーにおいて不動の地位を築いています。その巧みな楽器法と構造的な明晰さ、そして豊かな表現力は、現在に至るまで多くの聴衆と奏者を魅了し続けています。

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