交響曲第8番 (ハリス)

交響曲第8番『サンフランシスコ』

ロイ・ハリス（Roy Harris）の交響曲第8番は、『サンフランシスコ』（San Francisco）という副題を持つ作品です。この交響曲は、アメリカを代表する作曲家の一人であるハリスが1961年に完成させました。作曲の背景には、サンフランシスコ交響楽団が創立50周年を迎えるという記念すべき出来事があり、同楽団がこの作品の作曲を特別に委嘱したという経緯を持ちます。

作品の公式な初演は、作曲の翌年である1962年1月14日に、委嘱元であるサンフランシスコ交響楽団によって行われました。この時の演奏では、アルゼンチン出身の指揮者エンリケ・ホルダがタクトを執りました。また、特筆すべき点として、楽曲に登場する独奏ピアノパートを、作曲者自身の夫人であるジョアンナ・ハリス（Johana Harris）が担当しました。このように、委嘱団体、著名な指揮者、そして作曲家の夫人がソリストを務めるという、記念碑的な演奏会となりました。

楽曲の形式は、全体を通して切れ目なく演奏される単一楽章という構成をとっています。しかしながら、その内容は大きく分けて五つの異なる部分、あるいはセクションに分類することができます。これらのセクションはそれぞれが明確な性格を持ち、あたかも複数の楽章が連続して演奏されるかのような、多様な音楽的展開を生み出しています。これにより、単一楽章でありながらも、聴き手は変化に富んだ構成感を味わうことができます。各セクションが具体的にどのような性格を持っているかについての詳細は、スコアや専門的な分析に委ねられますが、一般的にハリスの交響曲はアメリカの広大な風景や歴史、あるいは人間の精神的な深みを描写することが多い傾向にあります。この作品もまた、『サンフランシスコ』という都市名が冠されていることから、何らかの形でこの都市にインスパイアされた音楽的表現がなされている可能性が考えられます。

この交響曲のために指定された楽器編成は以下の通りです。管楽器群としては、フルートが3名（うち1名はピッコロに持ち替え）、オーボエが2名、イングリッシュホルンが1名、クラリネットが2名、バスクラリネットが1名、ファゴットが3名（うち1名はコントラファゴットに持ち替え）が要求されます。金管楽器群は、ホルンが4名、トランペットが3名（うち1名はC調トランペットに持ち替え可能）、トロンボーンが3名、バリトン楽器が1名、チューバが1名という構成です。ここでバリトン楽器が用いられている点は、比較的珍しい編成と言えるでしょう。打楽器群としては、ティンパニ、小太鼓、大太鼓が用いられます。また、ハープも編成に含まれています。そして、この作品の特に目を引く特徴の一つとして、独奏ピアノが用いられ、さらにそのサウンドがマイクを通して増幅されるという指定がある点です。これにより、ピアノの音がオーケストラ全体の響きの中で特別な存在感を持つようになっています。弦楽器群は、標準的な弦五部、すなわちヴァイオリン（第1、第2）、ヴィオラ、チェロ、コントラバスからなる大編成が想定されています。

このように、交響曲第8番『サンフランシスコ』は、その作曲経緯、初演時の状況、そして特徴的な楽器編成やユニークな楽曲構成において、ロイ・ハリスの創作活動の中でも興味深い位置を占める作品と言えるでしょう。この作品は、アメリカの現代交響曲の歴史を知る上で重要な資料の一つとなっています。

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