京成3000形電車 (初代)

京成3000形電車

京成3000形電車は、1958年（昭和33年）に京成電鉄が導入した通勤形電車です。当時計画されていた都営地下鉄浅草線との相互直通運転に対応するため、大手私鉄としては初の地下鉄乗り入れ対応車両として登場しました。この車両の登場は、その後の京成電鉄の車両設計に大きな影響を与え、多数の派生形式を生み出すきっかけとなりました。

概要

3000形は、2両固定編成7本、計14両が製造されました。その革新的な設計思想は、後続の初代3050形、初代3100形、3150形、3200形、3300形といった車両群に引き継がれ、これらの車両は総称して「赤電」または「3000形」と呼ばれるようになりました。

導入にあたっては、14両のうち3001 - 3010号の10両が日本車輌製造で製造され、三井信託銀行（現・三井住友信託銀行）との信託契約が結ばれました。信託金額は10両で2億4,200万円でした。

車両概説

車体

車体は、京成電鉄として初めて18m車体を採用し、車幅も60mm拡大されました。車体裾には小径のRが設けられ、側面には片側3つの扉が配置されました。扉は幅1200mmの片引き戸で、扉間には戸袋部を含めて幅1000mmの大型窓が3つ設置されました。

前面は、中央に貫通扉を設置し、埋め込み式の貫通扉と窓上に白熱灯1灯の前照灯を備えています。車体こそ地下鉄乗り入れに対応するために大型化されましたが、全体の構成は当時の750形に似たものとなりました。

登場当初は「青電」塗装でしたが、1960年から1961年にかけて、3050形と同様のモーンアイボリーとファイアーオレンジのツートンカラーに、ステンレス縁取りとダークグレー帯を組み合わせた「赤電」塗装に変更されました。

内装

室内は、A-A基準に基づいた車体不燃化対策が施され、ベージュ色のアルミデコラ化粧板や広幅貫通路、窓の保護棒が特徴的でした。送風機には、当時流行していたファンデリアが採用され、外観上も屋根が二段構造となり、通風口が設けられました。

機器類

全車両が2両ユニットの電動車 (M) で構成され、奇数号車には電動発電機 (MG) と電動空気圧縮機 (CP) が、偶数号車には主制御器とパンタグラフが搭載されました。MGは容量5.5kVAのCLG-319-E、CPは750形以降で使用されたA-2が採用されました。

足回りには、750形での実績があったカルダン駆動方式が本格的に採用されました。3001 - 3008は汽車製造製のKS-114台車、TDカルダン、東洋電機製造製のTDK810/2Dモーターを、3009 - 3014は住友金属工業製のFS-318台車、WNカルダン、三菱電機製のMB3028Dモーターを搭載しており、両者は問題なく混結できる構造でした。

モーターの出力は75kWで、すべての台車に装着されました。この方式は3200形3220号車まで継続されました。起動加速度は3.5km/h/s、常用最大減速度は4km/h/sで、歯車比は6.0と高加速性能に重点が置かれていました。台車・駆動装置・モーターの製造会社を2通りの組み合わせで同数ずつ発注する方法は、750形から引き継がれ、1972年（昭和47年）製の3300形まで続きました。

落成当初の台車軌間は1,372mmでしたが、1959年秋から年末にかけての改軌に合わせて1,435mmに変更されました。これと同時に、ATSと応荷重装置が設置されました。

改造

1968年には列車無線が取り付けられ、1970年代後半には屋根の二段構造が廃止され、ベンチレーターが設置されました。また、運行番号表示器の位置が運転室窓に変更され、1975年には前照灯がシールドビーム化されました。

車体更新工事

1977年6月から1978年11月にかけて、車体更新工事が実施されました。主な内容は、前照灯の一体形ケース2灯化（いわゆる「ブタ鼻」形）、運転台の床面かさ上げ(100mm)と運転室窓の小型化、埋め込み式貫通幌の着脱式への変更、アンチクライマーの2本から3本への変更などでした。

3008までは車両番号順に4両化され、2両ユニットを分割可能にするため、3002・3003・3006・3007の運転台が撤去され、完全な中間車となりました。運転台撤去部は、隅が原型のR付と異なり、三つ折りの平面突き合わせとなりました。

3009 - 3014は完全中間車化され、2両分割で本形式・3050形基本4両編成の中央に挟み、6両固定編成の組成も可能になりました。

室内は、デコラ・床面が更新前と同色のものに張り替えられ、天井は白に再塗装されました。中吊り広告支えが普通鋼製からアルミ製に変更されました。また、車両間の貫通路が狭幅に変更され、中間車の奇数号車の成田空港寄りに貫通扉が設けられましたが、これは更新前に乗務員室境にあった扉を再利用したものでした。

更新後の改造

1980年から1982年にかけて、モーンアイボリー+ファイアーオレンジのツートンカラーからファイアーオレンジベースの新赤電色に変更されました。1984年末から1986年夏にかけて、側面扉開閉確認灯が2灯式となり、客室と乗務員室の仕切り扉と貫通扉の窓ガラス支持方式が黒Hゴムからステンレス枠に変更されました。

1984年から1986年にかけて、CPがA-2からC-1000に変更され、同時に側窓の保護棒も撤去されました。1988年には吊り手が増設されました。

運用の変遷

編成配置は、3001 - 3008の基本4両の中間に3009 - 3014の中間電動車ユニット2両ずつを挿入する形で6両固定編成を組む機会が多く、両数の関係上1本は3050形と組成せざるを得ませんでした。なお時には2ユニット挿入で8両固定編成となることもありました。

1980年代半ばまで、本形式・3050・3100形などは全車電動車でかつ加速性も優れていることから優等列車の運用に適した車両であるとされ、先頭車前部の台車が付随台車（T台車）の3200形（初期の20両は除く）と3300形に比較すると6両固定編成を組む機会が多かった。

3200形の6両固定編成化を開始した1986年秋頃からは、3009 - 3014が2両単位で3050形基本4両の中間に入り6両固定編成を組成し、3001 - 3008は4両で使用される機会が多くなりました。3005 - 3008は1987年11月に、3001 - 3004は1988年2月にそれぞれモーターを改良し、普通運用によるオーバーランを軽減しました。

廃車

3000形は車軸の構造が3050形以降の「赤電」各形式とは異なっており（登場翌年の改軌を考慮し、車軸を交換するだけで軌間変更が可能な構造を用いていたため）、冷房改造は困難であり、1991年3月19日から営業運転を開始した3700形によって置き換えられることとなりました。

3009 - 3014は1991年夏までに解体され、3001 - 3008は東成田駅の旧「スカイライナー」発着ホームにしばらく保留車として留置されていましたが、3004を除いた全車が1992年4月末に解体されました。

3004は1996年秋に赤電塗装化直後の状態に復元され、1997年2月以降、宗吾車両基地に新設された車両展示場に保存されています。

もう一度検索