京極高朗

京極高朗：丸亀藩を導いた改革者と相撲愛好家

京極高朗は、讃岐国丸亀藩の第6代藩主であり、丸亀藩京極家8代当主として、18世紀後半から19世紀半ばにかけて活躍した人物です。1798年、第5代藩主・京極高中の四男として江戸で生まれ、1800年には嫡子に指名されました。1811年、家督を相続すると、藩政改革や文化振興に力を注ぎました。

高朗の治世は、藩の経済発展と社会基盤整備に大きな足跡を残しました。まず、彼は優れた文学的才能を活かし、藩校「集義館」を設立。その後、城下に「敬止堂」を創設し、藩士だけでなく領民にも教育の機会を広げました。さらに、幕府の許可を得て新堀湛甫（新堀港）を建設。これは金比羅宮への参拝客の玄関口となり、観光業と商業の発展に大きく貢献しました。

高朗の改革は、経済面にとどまりませんでした。治世後期、士民の奢侈が目立つようになったため、藩政再建を目指し、大胆な改革に着手します。加藤俊治ら有能な人材を登用し、倹約と風紀を重んじる10か条の法律を制定。さらに、文教政策にも力を入れ、教育の振興に努めました。また、家臣に副業として団扇作りを推奨したことが、現在も香川県丸亀市の名産品である「丸亀うちわ」の起源になったという説があります。ただし、団扇作りの始まりは高朗の誕生以前という説や、藩士の内職以外の説も存在します。

高朗は、1850年に婿養子の京極朗徹に家督を譲り隠居しました。しかし、その後も丸亀に留まり、明治維新後の1874年に77歳で生涯を閉じました。

高朗は、藩政改革や文化振興に加え、意外な一面も持っていました。彼は大の相撲好きとして知られており、江戸詰めの際には両国の回向院で熱狂的に相撲観戦に興じていたそうです。その様子は、大名としてふさわしくないとして幕府から相撲観戦の禁止令が出されるほどでした。しかし、高朗は相撲への情熱を諦めず、家臣に「御相撲方」という役職を設け、相撲中継の実況をさせました。これは、現代のアナウンサーの先駆けと言えるものであり、弁舌だけで相撲の状況を伝え、擬似的な観戦を楽しむという、独創的な方法でした。

彼の相撲好きは、数代前の藩主である京極高豊にも共通するものであったと、『土芥寇讎記』に記述があります。高豊は、相撲好きであったものの、後にそれをやめたと記されています。

高朗の墓所は、香川県丸亀市の玄要寺にあります。1978年には「京極高朗墓所」として丸亀市指定史跡に指定され、現在もその功績を偲ぶ場所となっています。彼の生涯は、藩主としての政治手腕、文化人としての才能、そして人としての情熱を余すことなく示す、興味深い物語です。 高朗は、単なる藩主ではなく、時代の変化に対応しながら、藩の発展に貢献した改革者であり、独自の文化を育んだ人物として、讃岐の歴史に深く刻まれています。

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