丸亀うちわ

丸亀うちわ

丸亀うちわは、香川県丸亀市で生産されている伝統的な団扇です。その歴史は江戸時代に遡り、金毘羅信仰と深く結びつきながら発展してきました。現在では、全国のうちわ生産量の約9割を占める代表的な地場産業となっています。

起源

丸亀うちわの起源には、主に3つの説があります。

金光院の住職宥睨による考案: 寛永10年（1633年）に、金毘羅大権現の別当である金光院の住職宥睨が、マダケを素材とした「男竹丸柄」の渋うちわに「金」の文字印を入れ、柿渋を塗って作り上げたのが始まりであるという説。
丸亀藩士の内職としての奨励: 天明年間（1781年～1788年）に、京極丸亀藩が藩士の内職としてうちわ作りを奨励したことがきっかけとなり、製作の中心が「男竹丸柄」から「女竹丸柄」のうちわへと移行していったという説。
明治時代の「男竹平柄」うちわの登場: 明治時代に入り、「男竹平柄」のうちわが作られるようになり、現在ではこの「男竹平柄」が丸亀うちわの一般的な形として知られています。

歴史

江戸時代に入ると、うちわは庶民の間にも広く普及し、涼を取るだけでなく、炊事や装飾、虫追いなど、日常生活の様々な場面で利用されるようになりました。丸亀うちわは、金刀比羅宮への参拝客が丸亀港から上陸するのに伴い、土産物として全国に広まっていきました。安政年間（1860年頃）には、年間80万本ものうちわが生産されていたといわれています。

明治時代以降は、分業化が進み工場生産が主流となりました。大正末期には、うちわの骨の年間生産量は約6,000万本に達し、製造に従事する人は約2,000人にまで増加しました。また、海外への輸出も盛んに行われるようになりました。

明治時代の中頃には丸亀団扇組合が結成され、丸亀うちわは地域を代表する地場産業として発展しました。今日では、経済産業大臣指定の伝統工芸品として、その技術と伝統が受け継がれています。

意匠の工夫

木版技術の向上により、多色刷りの団扇絵が大量に生産されるようになり、美しい意匠が一般大衆にも行き渡るようになりました。図柄には、文芸（俳諧、和歌、漢詩）や浮世絵などが用いられ、団扇を通じて様々な表現や創意工夫が凝らされました。

現在

丸亀うちわは、現在も丸亀市の主要な地場産業として存続しており、伝統的な製法を守りながら、新しいデザインや素材を取り入れた製品も開発されています。丸亀市には「丸亀市うちわの港ミュージアム」があり、丸亀うちわの歴史や製造工程、様々なデザインの団扇を展示しています。

参考文献

丸亀高等女学校 編『団扇の研究』丸亀高等女学校、1941年。

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