京極高規

京極高規：激動の時代を生きた高家旗本

京極高規(きょうごく たかのり)は、江戸時代前期に活躍した高家旗本です。寛永20年(1643年)に、丹後宮津藩主京極高国の嫡男として誕生しました。母は伊達政宗の娘、千菊姫という、当時としては非常に恵まれた出自を持っていました。幼名は高頼、通称は兵勝丸、采女、近江と、数々の名で呼ばれていました。最終的には従四位下侍従、対馬守に叙任されています。

もし、父高国が改易(領地没収)されていなければ、京極高規は名門宮津藩の藩主としての人生を送っていたことでしょう。彼の曽祖父は関ヶ原の戦いで功績を挙げ、徳川家康から丹後一国を与えられた京極高知という人物です。その家系を考えると、高規の運命は最初から華やかなものと思われていたかもしれません。

明暦元年(1655年)、高規は将軍徳川家綱に御目見し、その後、明暦3年(1657年)には従四位下近江守に叙任され、後に対馬守に昇進しています。しかし、寛文6年(1666年)、父の改易によって、高規の人生は大きく変わります。彼は伊勢津藩主藤堂高次のもとに預けられ、3000俵の扶助料を与えられて生活することになったのです。

その後、延宝8年(1680年)に赦免されるまで、不遇な時代が続きました。赦免後は、母方の実家である仙台藩伊達家の援助を受け、飛領地であった常陸国竜崎で暮らしました。興味深いのは、彼の父高国が、伊達騒動と呼ばれる仙台藩の内紛において、伊達氏の存続に尽力していたという事実です。このことが、高規の後の生活に影響を与えたことは想像に難くありません。

元禄3年(1690年)、高規は幕府の旗本となり、蔵米2000俵を与えられ、旗本寄合席に所属しました。その後、元禄8年(1695年)には高家職に就き、侍従にも任官。さらに元禄10年(1697年)には、蔵米の代わりに安房朝夷郡などで2000石を与えられています。

高規の人生における大きな出来事の一つに、元禄14年(1701年)に発生した赤穂事件への関与があります。浅野長矩が江戸城中で吉良上野介に刃傷に及んだ事件です。高規はこの時、現場に居合わせており、後に浅野の刀を奪ったのは自分だと主張しました。同じ主張をした旗本梶川頼照と論争になったことも記録に残っています。梶川は後にこの功績により500石を加増されましたが、高規には何の恩賞も与えられませんでした。

宝永2年(1705年)には辞職し、寄合に所属。同年の11月には隠居し、養子である高甫(実弟)に家督を譲りました。そして、宝永5年(1708年)10月19日、66歳で生涯を閉じました。高規には正妻がおらず、2男1女と、2人の養子がいました。実子2人には先立たれたため、実弟2人を養子にしたのです。末弟の高林は伊達家の縁で宇和島藩に仕えていましたが、兄高甫の相続時に500石の分地を与えられ、旗本となりました。高甫は家督と2500石を相続したのです。

京極高規の生涯は、華麗な出自と、改易による苦難、そして高家としての華やかな地位と、赤穂事件への関与など、ドラマチックな出来事に満ち溢れていました。彼の生き様は、江戸時代という激動の時代を生き抜いた一人の武士の姿を鮮やかに描き出していると言えるでしょう。 また、伊達氏との繋がりや複雑な家系図なども、彼の生涯を理解する上で重要な要素となっています。

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