京極高通 (多度津藩主)

京極高通：多度津藩の礎を築いた男

京極高通は、江戸時代中期を代表する外様大名の一人であり、讃岐国多度津藩の初代藩主として知られています。波乱に満ちた生い立ちから、独自の藩を築き上げた彼の生涯は、多くのドラマを秘めています。

高通は、丸亀藩二代藩主京極高豊の四男として誕生しました。母は側室であったため、嫡子となる道は険しく、兄たちの夭折という不幸な出来事もありました。高豊の正室との間に生まれた五男・高或が嫡子として迎えられる中、高通の将来は不透明でした。しかし、家系存続を危惧した高豊は、幕府に支藩の設立を願い出ます。この決断が、高通の運命を大きく変えることとなります。

元禄七年(1694年)、高豊が40歳の若さで亡くなると、高或が丸亀藩を継承。一方、高通は香川県仲多度郡多度津町周辺に一万石の領地を与えられ、多度津藩初代藩主の座に就きました。わずか四歳での襲封であったため、実質的な藩政運営は正徳元年(1711年)まで待つことになります。丸亀城内に藩庁を置き、江戸には麻布鳥居坂に藩邸を構えました。現在、六本木鳥居坂にあった江戸上屋敷の跡地は国際文化会館となり、当時の面影を垣間見ることができます。静かに佇むその地は、往時の繁栄を偲ばせる歴史の証人と言えるでしょう。

宝永六年(1709年)には叙任を果たし、藩主としての地位を固めていきます。高通は、若いながらも藩政に尽力し、領民の生活向上に努めたと伝えられています。その具体的な施策については史料が乏しく詳細な内容は不明な点も多いですが、領民からの信頼を得ていたことは想像に難くありません。

享保二十年(1735年)、53歳で隠居。家督は長男の高慶に譲りました。「道静」と号し、隠居後は和歌や書道に親しみ、穏やかな余生を送ったとされています。しかし、その静かな日々も長くは続かず、寛保三年(1743年)に江戸藩邸で病没しました。

京極高通の生涯は、決して平坦なものではありませんでした。しかし、困難を乗り越え、新たな藩を築き上げた彼の存在は、多度津の歴史に大きな足跡を残しました。幼少期からの苦難、藩主としての責任、そして隠居後の穏やかな日々。彼の生き様は、私たちに多くの教訓を与えてくれるでしょう。国際文化会館の敷地に残る江戸藩邸の面影は、高通の足跡を今に伝える貴重な遺産であり、歴史を体感できる場所として、多くの人々に親しまれています。その場所を訪れることで、私たちは江戸時代の人物、京極高通の生き様に思いを馳せることができるのです。

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