京都市電烏丸線

京都市電烏丸線

京都市電烏丸線は、京都市の幹線道路である烏丸通に敷設されていた軌道路線です。市街地の中心部を南北に貫き、京都駅前から北区小山に至る重要な交通網として機能しました。

建設の背景

この路線の建設は、明治時代末期から大正時代にかけて実施された京都市三大事業の一つである「道路拡張および電気鉄道敷設事業」と、それに続く「都市計画軌道延長事業」の一環として進められました。都市機能の近代化と交通需要の増大に応えるために計画されたものです。

特徴的な区間

烏丸線は全線が道路上に敷設された併用軌道でした。特に記憶される特徴として、東本願寺の門前における軌道経路の変更があります。多くの参拝者を抱える東本願寺は、門前に電車が走行することによる参拝者との接触事故を懸念し、市に対して軌道の迂回を要望しました。これに対し、東本願寺は東向かいの土地の寄付と軌道設計変更費用などの負担を申し出、市会の承認を得て軌道は東寄りに迂回して敷設されました。

また、烏丸下立売から烏丸丸太町の間は、当時存在した狭軌の京電中立売線と標準軌の烏丸線が同一空間を共有する特殊な区間でした。これは「六線共用」と呼ばれ、三線軌条（3本のレール）の複線構造となっており、異なる軌間の電車が同時に走行することが可能でした。この区間は、1926年の中立売線廃止に伴い解消されています。

開業から廃止まで

烏丸線は段階的に開業しました。最初の区間である七条駅前（後の京都駅前）から烏丸丸太町間が1912年6月11日に開業。翌1913年5月26日には烏丸丸太町から烏丸今出川まで延伸され、この際に前述の六線共用区間が誕生しました。さらに、1923年10月21日には烏丸今出川から植物園前（中賀茂橋西詰）までが開業し、これにより烏丸線は全線が開通しました。開業後、路線の運営を支える変電所（姉小路、鞍馬口）や車庫（小山、後の烏丸）も順次開設されています。

時代と共に運行形態も変化しました。1940年には急行運転が開始され、市民の利用時間帯に合わせて運行されましたが、戦時中の1943年には終日運転に拡大されました。戦後、1954年には一旦終了するものの、1962年に再度午前中のラッシュ時間帯に限定して復活しました。1964年には2両連結運転やワンマンカーの運行も導入され、輸送力増強や合理化が図られました。また、同年には自動車の併用軌道への乗入が全面開放されています。

1970年代に入ると、京都市の新たな交通体系として地下鉄烏丸線の建設計画が具体化します。これに伴い、烏丸線の大部分は廃止されることとなりました。1974年4月1日には、烏丸車庫前から七条烏丸までの区間が廃止され、その機能は市バスに転換されました。残る七条烏丸から京都駅前までの区間も、1977年10月1日に七条線、河原町線の一部区間と同時に廃止され、京都市電烏丸線はその歴史に幕を下ろしました。最終的に、京都市電全廃に伴い、烏丸車庫や鞍馬口変電所も1978年に廃止されています。

祇園祭と烏丸線

京都市の伝統行事である祇園祭の山鉾巡行時には、巡行経路にあたる烏丸通の電停付近で特別な対応が取られました。山鉾の通行を優先するため、巡行路上の架線を切断し、電車は惰力で通過させました。もし途中で停車してしまった場合には、職員が人力で車両を押して通過させるという、祭りとの共存を示すエピソードも残されています。

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