人、山の上で聞きしこと

『人、山の上で聞きしこと』（Ce qu'on entend sur la montagne）S.95は、フランツ・リストが作曲した最初の交響詩であり、彼の交響詩作品群の先駆けとなる重要な作品です。この作品は、しばしば『山上で聞きしこと』や『人、山の上で聞いたこと』などと表記されることもありますが、稀に『山岳交響曲』と呼ばれることもあります。

リストの交響詩は全13曲あり、この作品はその最初のもの（第1番）にあたります。リストは1833年から1835年頃にかけてこの作品のスケッチを開始し、1849年に完成させました。初演は翌1850年にヴァイマルで行われ、その後も何度か改訂が重ねられ、現在の形に至っています。

この交響詩のタイトルは、リストと親交のあった詩人ヴィクトル・ユゴーが1831年に発表した詩集「秋の葉」に収録された詩の一篇に由来しています。詩の内容は、山中で2つの声を聞く詩人の心情を描写しており、一つは広大で力強い自然の声、もう一つは苦悩に満ちた人間の声です。これらの声は互いに闘争し、入り乱れながら、最終的には神聖なものへと解消されるというテーマを扱っています。

この作品の演奏時間は約30分と、リストの交響詩の中で最も長いのが特徴です。編成は、ピッコロ、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ（3個）、バスドラム、シンバル、ハープ、そして弦五部という大規模なものです。この編成からも、リストがこの作品に込めた壮大なスケール感が伺えます。

曲の構成は、まず自然の神秘を表現するような曖昧な雰囲気で始まり、次第に人間の主題と、崇高で雄大な自然の主題が現れます。これらの主題は互いに争うように展開していき、その中でアンダンテ・レリジオーソの主題がトロンボーンによって荘厳に奏でられます。最終的には平和な静けさの中で曲が終わりを迎えます。この作品は、リヒャルト・シュトラウスの『アルプス交響曲』の先駆的な作品であるとされており、後の音楽作品に大きな影響を与えました。

リストの音楽の特徴である、ダイナミックな表現力、色彩豊かなオーケストレーション、そして文学的な背景を音楽に落とし込む能力が存分に発揮されたこの作品は、聴く者に深い感動を与えます。

人、山の上で聞きしことの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

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