人情紙風船
『人情紙風船』は、1937年に公開された山中貞雄監督の作品で、時代劇映画のジャンルにおいて傑作として知られています。山中監督は、日中戦争で戦病死したため、本作は彼の遺作となりました。
この映画は、河竹黙阿弥の歌舞伎『梅雨小袖昔八丈』（通称『髪結新三』）を原作としています。脚本は、山中監督の盟友である三村伸太郎が担当しました。制作には、前進座が深く関わっており、座の花形である河原崎長十郎と中村翫右衛門が主演を務め、多くの座員も出演しています。また、当時前進座に所属していた加東大介や河野秋武も、それぞれ市川莚司、山崎進蔵という名義で出演しています。
山中監督は、稲垣浩らとともに「鳴滝組」という監督・脚本家集団に参加しており、彼らが追求した「髷をつけた現代劇」という新しい時代劇のスタイルを確立しました。その中でも、『人情紙風船』は最も優れた作品の一つとされています。この作品は、1937年度のキネマ旬報ベストテンで第7位にランクインしました。
物語は、江戸の貧乏長屋を舞台に展開します。ある日、長屋で浪人が首を吊って亡くなり、その弔いとして、髪結いの新三が中心となり、長屋の住人たちは酒を酌み交わします。しかし、お通夜の場は次第に騒ぎとなり、酒盛りを楽しむ陽気な場へと変わっていきます。
同じ長屋に住む浪人の海野又十郎は、父の知人である毛利三左衛門に仕官を頼みますが、相手にされません。一方、毛利は質屋の娘お駒を高家の武士に嫁がせようと画策しており、お駒は番頭の忠七に想いを寄せています。新三は賭博を開いていましたが、ヤクザの親分である弥太五郎源七の怒りを買い、金に困ってしまいます。そこで、新三は質屋に髪結いの道具を持ち込みますが、これも断られてしまいます。
又十郎は何度も毛利に会いに行きますが、ついに門前払いとなります。雨の夜、お駒が忠七を待っているところを見かけた新三は、彼女を長屋に連れ込みます。これは、弥太五郎源七を困らせるための行動でした。誘拐を知った質屋は、弥太五郎を使ってお駒を連れ戻しに来ますが、新三はこれを追い返します。その後、大家の計らいで、お駒は忠七の手で無事に質屋に戻され、大家と新三は50両の大金を得ます。その夜、彼らはその金で宴会を開きます。又十郎も分け前をもらって宴会に参加しますが、真面目だと思われていた彼の行為に、長屋の女房たちは不快感を露わにします。
『人情紙風船』は、公開当時から高い評価を受けており、その後の映画史においても重要な作品として位置づけられています。キネマ旬報のランキングでは、以下の通り、何度も上位にランクインしています。
1979年：「日本公開外国映画ベストテン（キネ旬戦後復刊800号記念）」第4位
1989年：「日本映画史上ベストテン（キネ旬戦後復刊1000号記念）」第13位
1989年：「大アンケートによる日本映画ベスト150」（文藝春秋発表）第10位
1995年：「オールタイムベストテン・日本映画編」（キネ旬発表）第4位
1999年：「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編（キネ旬創刊80周年記念）」第18位
2009年：「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編（キネ旬創刊90周年記念）」第23位
この作品は、公開年または監督の没年から50年以上が経過しており、日本の著作権法上ではパブリックドメインとなっています。これにより、自由に複製、上映、改変、翻案などが可能となっています。
製作：武山政信
監督：山中貞雄
原作：河竹黙阿弥
脚本：三村伸太郎
撮影：三村明
音楽：太田忠
演奏：P.C.L管弦楽団
キャスト
河原崎長十郎：海野又十郎
中村鶴蔵：金魚売源公
中村翫右衛門：髪結新三
板東調右衛門：按摩藪市
市川楽三郎：目明し弥吉
市川菊之助：錠前屋の兼吉
山崎長兵衛：徳兵衛
中村進五郎：夜そば屋の甚吉
板東みのる：吉兵衛
市川章次：役人
市川莚司(加東大介)：百蔵
中村公三郎：流しの与吉
市川笑太朗：弥太五郎源七
助高屋助蔵：家主長兵衛
嵐敏夫：平六
市川扇升：長松
嵐芳三郎：白子屋久兵衛
沢村比呂志：磨師の卯之公
市川岩五郎：古傘買いの乙松
山崎進蔵：猪助
橘小三郎：毛利三左衛門
瀬川菊之丞：忠七
岬たか子：乙松の女房おくま
原緋紗子：源公の女房おてつ
岩田富貴子：久兵衛の女房おなつ
一ノ瀬ゆう子：甚七の女房おちよ
山岸しづ江：又十郎の女房おたき
霧立のぼる：白子屋の娘お駒
御橋公：白子屋久左衛門
『人情紙風船』は、戦後に4度テレビドラマとしてリメイクされています。
1958年：NHK『お好み日曜座』
1959年：KRT『サンヨーテレビ劇場』
1963年：NET『シオノギ日本映画名作ドラマ』
1978年：NHK『土曜ドラマ』
人情紙風船 - 日本映画データベース
人情紙風船 - allcinema
人情紙風船 - KINENOTE
人情紙風船 - オールムービー（英語）
人情紙風船 - IMDb（英語）
懐かしの名作シリーズ 人情紙風船 - NHK放送史
制作の背景
この映画は、河竹黙阿弥の歌舞伎『梅雨小袖昔八丈』（通称『髪結新三』）を原作としています。脚本は、山中監督の盟友である三村伸太郎が担当しました。制作には、前進座が深く関わっており、座の花形である河原崎長十郎と中村翫右衛門が主演を務め、多くの座員も出演しています。また、当時前進座に所属していた加東大介や河野秋武も、それぞれ市川莚司、山崎進蔵という名義で出演しています。
山中監督は、稲垣浩らとともに「鳴滝組」という監督・脚本家集団に参加しており、彼らが追求した「髷をつけた現代劇」という新しい時代劇のスタイルを確立しました。その中でも、『人情紙風船』は最も優れた作品の一つとされています。この作品は、1937年度のキネマ旬報ベストテンで第7位にランクインしました。
あらすじ
物語は、江戸の貧乏長屋を舞台に展開します。ある日、長屋で浪人が首を吊って亡くなり、その弔いとして、髪結いの新三が中心となり、長屋の住人たちは酒を酌み交わします。しかし、お通夜の場は次第に騒ぎとなり、酒盛りを楽しむ陽気な場へと変わっていきます。
同じ長屋に住む浪人の海野又十郎は、父の知人である毛利三左衛門に仕官を頼みますが、相手にされません。一方、毛利は質屋の娘お駒を高家の武士に嫁がせようと画策しており、お駒は番頭の忠七に想いを寄せています。新三は賭博を開いていましたが、ヤクザの親分である弥太五郎源七の怒りを買い、金に困ってしまいます。そこで、新三は質屋に髪結いの道具を持ち込みますが、これも断られてしまいます。
又十郎は何度も毛利に会いに行きますが、ついに門前払いとなります。雨の夜、お駒が忠七を待っているところを見かけた新三は、彼女を長屋に連れ込みます。これは、弥太五郎源七を困らせるための行動でした。誘拐を知った質屋は、弥太五郎を使ってお駒を連れ戻しに来ますが、新三はこれを追い返します。その後、大家の計らいで、お駒は忠七の手で無事に質屋に戻され、大家と新三は50両の大金を得ます。その夜、彼らはその金で宴会を開きます。又十郎も分け前をもらって宴会に参加しますが、真面目だと思われていた彼の行為に、長屋の女房たちは不快感を露わにします。
作品の評価
『人情紙風船』は、公開当時から高い評価を受けており、その後の映画史においても重要な作品として位置づけられています。キネマ旬報のランキングでは、以下の通り、何度も上位にランクインしています。
1979年：「日本公開外国映画ベストテン（キネ旬戦後復刊800号記念）」第4位
1989年：「日本映画史上ベストテン（キネ旬戦後復刊1000号記念）」第13位
1989年：「大アンケートによる日本映画ベスト150」（文藝春秋発表）第10位
1995年：「オールタイムベストテン・日本映画編」（キネ旬発表）第4位
1999年：「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編（キネ旬創刊80周年記念）」第18位
2009年：「映画人が選ぶオールタイムベスト100・日本映画編（キネ旬創刊90周年記念）」第23位
パブリックドメイン
この作品は、公開年または監督の没年から50年以上が経過しており、日本の著作権法上ではパブリックドメインとなっています。これにより、自由に複製、上映、改変、翻案などが可能となっています。
スタッフとキャスト
製作：武山政信
監督：山中貞雄
原作：河竹黙阿弥
脚本：三村伸太郎
撮影：三村明
音楽：太田忠
演奏：P.C.L管弦楽団
キャスト
河原崎長十郎：海野又十郎
中村鶴蔵：金魚売源公
中村翫右衛門：髪結新三
板東調右衛門：按摩藪市
市川楽三郎：目明し弥吉
市川菊之助：錠前屋の兼吉
山崎長兵衛：徳兵衛
中村進五郎：夜そば屋の甚吉
板東みのる：吉兵衛
市川章次：役人
市川莚司(加東大介)：百蔵
中村公三郎：流しの与吉
市川笑太朗：弥太五郎源七
助高屋助蔵：家主長兵衛
嵐敏夫：平六
市川扇升：長松
嵐芳三郎：白子屋久兵衛
沢村比呂志：磨師の卯之公
市川岩五郎：古傘買いの乙松
山崎進蔵：猪助
橘小三郎：毛利三左衛門
瀬川菊之丞：忠七
岬たか子：乙松の女房おくま
原緋紗子：源公の女房おてつ
岩田富貴子：久兵衛の女房おなつ
一ノ瀬ゆう子：甚七の女房おちよ
山岸しづ江：又十郎の女房おたき
霧立のぼる：白子屋の娘お駒
御橋公：白子屋久左衛門
テレビドラマ
『人情紙風船』は、戦後に4度テレビドラマとしてリメイクされています。
1958年：NHK『お好み日曜座』
1959年：KRT『サンヨーテレビ劇場』
1963年：NET『シオノギ日本映画名作ドラマ』
1978年：NHK『土曜ドラマ』
外部リンク
人情紙風船 - 日本映画データベース
人情紙風船 - allcinema
人情紙風船 - KINENOTE
人情紙風船 - オールムービー（英語）
人情紙風船 - IMDb（英語）
懐かしの名作シリーズ 人情紙風船 - NHK放送史
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