人身保護法 (イギリス)

人身保護法（Habeas Corpus Act）とは

人身保護法は、1679年にイギリスで制定された法律で、不当な逮捕や拘束から個人を保護することを目的としています。この法律は、後の人権保護に関する法制度に大きな影響を与え、現代社会においても重要な意義を持っています。

歴史的背景

人身保護法の成立には、17世紀のイギリスにおける政治的・宗教的な対立が深く関わっています。イングランド王政復古後、チャールズ2世はカトリックを擁護し、絶対王政を目指す政策を推進しました。これにより、清教徒派との対立が激化し、議会は国王の権力濫用に対抗する必要に迫られました。

チャールズ2世のカトリック擁護政策に対抗するため、議会は1673年に官吏と議員を国教徒に限る審査法を制定しました。さらに、1679年には人身保護法を改正し、国民が不当に逮捕されないようにするための制度を確立しました。この改正により、人身保護令状の発行対象が刑事犯全体に拡大され、令状の発行手続きも迅速化されました。

人身保護令状（ヘイビアス・コーパス）

人身保護令状は、13世紀初頭から存在していましたが、当初は不当な逮捕の救済手段として用いられていました。1679年の人身保護法では、この令状の発行対象が刑事犯全体に拡大されただけでなく、発行手続きの迅速化が図られました。これにより、不当に逮捕された人々は速やかに裁判所の判断を仰ぐことができるようになり、個人の自由がより確実に保護されるようになりました。

人身保護法の意義

人身保護法は、中世における不当な拘束からの解放を目指す人権闘争の成果として生まれました。マグナ・カルタで謳われた不当な介入や拘束の禁止が、中世には教会や地方諸侯の権力拡大によって形骸化してしまっていた背景があります。人身保護法は、この状況を是正し、個人の身体の自由を回復させるための重要な制度として確立されました。また、この法律は、思想信教の自由権の保障制度の前提条件となるものでもあり、1689年の寛容法によって思想信教の自由が確立される上で、重要な役割を果たしました。

英国では中世において、地方諸侯や宗教裁判による不当な拘束が頻発しており、人身保護法は、それらの不当な拘束から個人を保護するための救済制度として機能しました。1670年には、すでに民事訴訟として慣習化されており、国王への直訴制度や教会権限に対抗する国王権の行使などが行われていました。

日本への影響

1948年に制定された日本の人身保護法は、このイギリスの人身保護法を範としています。日本の人身保護法は、不当に逮捕・拘束された者を救済する制度として、日本国憲法における人権保障の重要な柱の一つとなっています。

まとめ

人身保護法は、不当な逮捕や拘束から個人の自由を守るための重要な法律です。その成立には、17世紀のイギリスにおける政治的・宗教的な対立が背景にあり、中世からの人権闘争の成果としても位置づけられます。この法律は、後の人権保護に関する法制度に大きな影響を与え、現代社会においても重要な意義を持ち続けています。

脚注

関連図書

Wood, James, ed. (1907). "Habeas Corpus". The Nuttall Encyclopædia (英語). London and New York: Frederick Warne.

関連項目

ネミネム・カプティヴァビムス
ヘイビアス・コーパス
人身保護法 (日本)
* イギリスの憲法

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