人造人間クエスター

『人造人間クエスター』の全貌

『人造人間クエスター』（原題：The Questor Tapes）は、1973年にNBCが制作したアメリカのSFテレビドラマです。すでに大ヒットを記録した『宇宙大作戦』の原作者ジーン・ロッデンベリーが新たなシリーズの可能性を探る中で制作されましたが、結果的には単発のパイロット版のみが放送されることになりました。1974年1月23日に初めて放送され、日本では1977年にNHKによって『人造人間クエスター』というタイトルで放映されました。

制作背景

ロッデンベリーは、『宇宙大作戦』が終了した後、次のプロジェクトを模索していました。本作は、テレビシリーズ化を目指して製作されたものですが、当初から制作方針に関する意見の対立が見られました。主役にはロバート・フォックスワースとマイク・ファレルがキャスティングされ、さらに数名のキャストとスタッフが参加する予定でした。この作品は、視聴率が低迷する「デススロット」と呼ばれる金曜の夜10時の枠で放送されることになりましたが、それが結果として影響を与えた可能性もあります。

制作段階で、ロッデンベリーはパイロット版のエンディングにおける重要な啓示を含めることを主張しましたが、NBCとユニバーサルとの見解の相違から、シリーズ化は断念され、放送されたのはパイロット版のみとなりました。ロッデンベリーの創造力が反映されたこの作品は、1975年度ヒューゴー賞にもノミネートされています。また、音楽は名ジャズミュージシャンのギル・メレによって作曲され、いくつかの曲は後に他の作品にも使用されました。

あらすじ

物語は、ミケランジェロの名画「アダムの創造」がオープニングに使用されるところから始まります。エミール・ヴァスロヴィック博士はアンドロイド「クエスター」を開発するためのプロジェクトを推進していましたが、急に姿を消します。残された専門家チームは研究記録を解析しようと試みますが、その過程で多くのデータを失ってしまいます。博士の助手であるジェリー・ロビンソンの助言が軽視される中、アンドロイドは不完全な形で突然起動します。彼は自らを「クエスター」と名乗り、ヴァスロヴィック博士の行方を追う旅に出ます。

ジェフリー・ダーロ博士はロビンソンを疑い、彼に自宅軟禁を命じますが、クエスターがロビンソンの元に姿を現し、ヴァスロヴィックの捜索を手伝うことを頼みます。二人は共にロンドンへ向かい、そこではヴァスロヴィックが設置した情報収集センターの存在を知ります。クエスターはさらに、目的地に向かうための手掛かりを掌握し、ロビンソンに感謝を表明しつつも、自らの運命に直面することになります。

影響と評価

この作品は、多くのSFファンの心に残る印象を与えました。特に、後の『新スタートレック』に登場するアンドロイド・データ少佐は、クエスターからの影響を受けたキャラクターとして知られています。また、制作以降も再放送やメディア化が行われ、日本においては1980年代初頭まで再放送が続きました。2012年にはアメリカでDVD化され、その後日本でもリリースされました。

『人造人間クエスター』は、SFドラマにおける重要な一作品であり、その影響を今なお語り継がれています。

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