人間 (雑誌)

文藝誌『人間』の軌跡

『人間』は、1945年12月20日に創刊された日本の文藝誌で、敗戦直後の日本文学界において重要な役割を果たしました。発行元は当初鎌倉文庫で、編集長には木村徳三が就任しました。この雑誌は、川端康成と久米正雄の発案によって生まれ、当時の文士たちが集結した豪華な執筆陣を有していました。彼らには小宮豊隆や吉川幸次郎、永井荷風、三島由紀夫など、後に名を馳せる作家が名を連ねています。特に創刊号の売り上げが好調で、印刷された2万5000部はすぐに売り切れたと伝えられています。

創刊号とその影響

創刊時、雑誌の売れ行きは非常に良く、続く号も20万部以上を売り上げるなど、時代の風潮が後押ししたとはいえ、文藝誌としての確固たる地位を築いていきました。特に1946年6月には、無名だった三島由紀夫の短篇「煙草」が掲載され、大きな反響を呼びました。しかし、時代の変化とともに雑誌の環境は厳しくなっていきました。

衰退と休刊

1947年4月、紙の統制によってページ数が削減されたことが影響し、部数は5万に減少しました。木村編集長はその解決策として『人間小説集』を立ち上げましたが、経営の不安定さは増すばかりでした。特に朝鮮戦争勃発に伴う社会の現実主義的な風潮と『人間』の理想主義的な方針とのギャップは、雑誌の存続にとって致命的な要因となりました。

また、目黒書店は教科書専門の出版社であったため、文藝誌の編集に関する知識が不足しており、編集チームは引き続き木村のもとで努力しましたが、経営状態は悪化の一途を辿りました。

結末とその後

1950年には『人間』の新年号が発行されましたが、徐々に部数は減少し、社員の月給支払いにも支障をきたすようになりました。そして、1951年に目黒書店が不渡り手形を出した結果、1951年8月号を最後に『人間』は廃刊となりました。

まとめ

「人間」は戦後の日本文学界における重要な文藝誌として、多くの著名作家たちが参加したことや文化的影響力から決して軽視できない存在です。しかし、時代の変化とともに経営面での問題が積み重なり、短い歴史に終止符を打つこととなりました。『人間』の存在は、当時の文学的状況や社会の動向を映す鏡であり、今なお多くの文学ファンに記憶されています。

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