人魚姫の像

コペンハーゲンの人魚姫の像：愛と破壊のシンボル

人魚姫の像は、デンマークの首都コペンハーゲンのランゲルニエ埠頭に佇む、世界的に有名な観光名所です。ハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話『人魚姫』をモチーフにしたこのブロンズ像は、人魚が人間へと姿を変える様子を表現しており、コペンハーゲンのシンボルとして、長年にわたり多くの人々に愛されてきました。

像の概要

岩の上に腰掛けた人魚の姿は、高さ1.25メートル、重さ約175キログラム。通常は岸から数メートル先の海上にありますが、干潮時には歩いて像まで行くことができます。年間100万人以上が訪れる人気スポットであり、特に中国人観光客に人気があります。

製作の経緯

像の製作は、カールスバーグ醸造所の創立者の息子であるカール・ヤコブセンが、アンデルセンの『人魚姫』を題材にしたバレエに感銘を受けたことがきっかけでした。彼は彫刻家エドヴァルド・エリクセンに制作を依頼し、1913年8月23日に現在の場所に設置されました。

モデルについては、バレエで主役を演じたエレン・プリースが当初予定されていましたが、裸体でのモデルを拒否したため、頭部のみのモデルとなり、首から下はエドヴァルドの妻エリーネ・エリクセンが務めました。人魚像は二本足で表現されていますが、これはエリーネの脚があまりに美しく、鱗で覆うのが忍びなかったためと言われています。

度重なる損壊と修復

しかし、その人気とは裏腹に、人魚姫の像はこれまで幾度となくヴァンダリズムの対象となり、損傷を受けてきました。

1961年：髪を赤く塗られ、ブラジャーとパンツを描かれる
1963年：全身を赤く塗られる
1964年：頭部が切断され持ち去られる（後に新しい頭部が設置）
1973年：頭から赤いペンキをかけられる
1976年：全身を赤く塗られる
1984年：右腕が切断される（2日後に返却）
1990年：首に深い切れ込みを入れられる
1998年：再び頭部が失われる（約1ヶ月後に返却）
2003年：爆発物で台座が爆破され、胴体が海に投げ出される
2004年：黒いブルカを被せられ、「EUにトルコ？」と書かれたたすきを掛けられる
2006年：手にディルドーを持たされ、緑色のペンキをかけられ、「3月8日」と書かれる
2007年：全身をピンクや赤で塗られる、イスラム装束をかけられる
2017年：赤いスプレーで塗られ、「フェロー諸島の鯨を守れ」と書かれる、青と白の塗料をかけられる
2020年：台座に「FREE HONG KONG」や「RACIST FISH」と落書きされる

これらの損壊行為は、像の背後にある物語や象徴性に対する無理解、あるいは社会的なメッセージの発信手段として行われたと考えられます。その度に修復作業が行われ、現在も元の姿を取り戻していますが、その傷跡は、社会における芸術作品の保護という課題を私たちに突き付けています。

世界に広がる人魚姫

人魚姫の像は、コペンハーゲンだけでなく、世界各地にレプリカが存在します。日本国内にも大分市、大阪港、名古屋港、愛知県安城市などに設置されており、多くの人々に親しまれています。また、アメリカ、ルーマニア、スペイン、韓国など、海外にも数多くのレプリカが存在し、それぞれの地域で愛されています。

その他の情報

2010年の上海万博では、デンマーク館で展示するためにコペンハーゲンから移送されました。
像の著作権は、作者の死後70年の2029年まで保護されています。
* 「世界三大がっかり」の一つとして挙げられることがあります（ただし、定義は文献によって異なります）。

コペンハーゲンの人魚姫の像は、単なる観光名所ではなく、愛、喪失、そして人間の本質について深く考えさせられる芸術作品です。訪れる人々は、その美しさと儚さの中に、それぞれの物語を見出すことでしょう。

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