仁井田陞

仁井田陞（にいだ のぼる）に関する概略

仁井田陞は1904年1月1日に生まれ、1966年6月22日に亡くなった日本の法制史学者で、特に中国法制史の研究において高い評価を得ています。宮城県仙台市出身で、東京大学の名誉教授として講義を行った他、多くの影響力のある研究を残しました。彼は中田薫に師事し、法学の道を歩んでいきました。

経歴と学問的背景

仁井田は旧制松本高等学校の文科甲類を卒業後、1928年に東京帝国大学法学部を卒業しました。その後、東方文化学院東京研究所の研究員として活動を開始します。日本が第二次世界大戦に突入すると、彼は華北農村や北京商工ギルドの調査にも従事しました。戦後は、法社会学的な視点から得た研究成果をもとに、『中国の社会とギルド』や『中国の農村家族』といった著作を発表しました。

中国法制史の領域でも彼は影響力を持つ研究を続け、『中国法制史』や『中国法制史研究』が特に知られており、これらの著作は朝日賞を受賞するなど評価されています。1942年には東京大学東洋文化研究所の教授に就任し、1964年までそこで学問に従事しました。その間、所長を任されたこともあり、後に名誉教授の称号を贈られました。

研究活動と業績

仁井田の専門は中国法制史であり、彼のキャリア初期における重要な研究テーマは「唐令の復旧ならびにその歴史的研究」でした。このテーマに取り組んだ結果、彼は唐代の律令に含まれる唐令の訳文を、多くの古典文献から収集し、ついには原法典の体系と条文の復元に成功しました。その成果は『唐令拾遺』という形で纏められ、彼は1934年に帝国学士院恩賜賞を受賞しました。

続けて彼は「唐宋法律史文書の研究」に取り組み、『唐宋法律文書の研究』や『支那身分法史』といった著作で日本の中国法制史研究に新たな地平を開きました。特に、彼の業績は世界的に見ても高く評価され、中国法制史の研究のさらなる発展に寄与しました。

思想と教育

彼はデニス・C・トゥウィチェットなどの学生たちに法学の教育を施しました。また、戦争を挟んでも研究を継続し、学問と社会との関わりについて深い洞察を持っていました。彼は法律の倫理や社会との相互作用についても多くの著作を残しました。

受賞歴と栄典

仁井田は、1934年に受賞した帝国学士院恩賜賞や、1965年の朝日賞の他、正三位勲二等瑞宝章という栄誉ある賞も授与され、彼の学問的貢献は広く認識されています。

家族と親族

親族には、法学者として明治時代の民法典制定に貢献した仁井田益太郎や、台湾総督府の逓信局長として活躍した妻の父吉田平吾がいます。

著作

仁井田は多くの著書を執筆しており、その中には『唐令拾遺』や『支那身分法史』『中国法制史』などがあります。さらには、彼の研究成果を集大成した『中国法制史研究シリーズ』も有名です。

最後の時期

仁井田は1966年、ロンドンを訪れている際に脳腫瘍を発症し、その後の帰国後に急速に健康を崩し亡くなりました。しかし、彼の学問は現在も生き続けており、後進の研究者たちに大きな影響を与えています。

もう一度検索