今川 (福岡県)

今川：福岡県北東部の水脈と歴史

福岡県北東部を流れる今川は、全長31.63kmの二級河川です。英彦山を源流とし、北九州地域を潤しながら周防灘へと注ぎ込む、この地域にとって重要な水系を成しています。その歴史と地理、そして人々の生活との関わりについて、詳しく見ていきましょう。

地理：英彦山から周防灘へ

今川の源流は、豊かな自然に恵まれた英彦山（福岡県田川郡添田町）付近に位置しています。上流域では、油木ダムが重要な役割を担っています。このダムは、北九州京築地方における貴重な水資源の貯留と供給、そして治水に貢献しています。

添田町を流れ下る今川は、赤村の中心部で流れを北東へと変えます。その後、京都郡みやこ町へと進み、平成筑豊鉄道田川線や福岡県道34号行橋添田線と並行して流路を形成します。行橋市に入ると下流域となり、市街地を貫流して、河口付近で江尻川と合流し、周防灘（瀬戸内海）へと注ぎ込みます。福岡県内を流れる河川の中でも5番目の長さを持つ、主要な水系と言えるでしょう。

歴史：変遷と治水への取り組み

今川の歴史は古く、元禄9年（1691年）に著述された貝原益軒の記録では、「天生田川」という名称で記されています。これは、当時の河畔にあった村名に由来するものです。

貞享年間には、小倉藩の筋奉行であった田中條右衛門によって大規模な改修工事が行われました。この工事では、流路の付け替えと直線状の築堤が行われ、現在も「千間土手」として知られる、その痕跡を垣間見ることができます。

昭和中期以前の今川は、豪雨のたびに氾濫を繰り返す、暴れ川として知られていました。赤村や行橋市など、流域一帯は度重なる水害に見舞われ、人々の生活に大きな脅威をもたらしました。しかし、1972年の油木ダム完成により、その状況は大きく改善されました。水害の発生頻度は減少しましたが、現在でも大雨時には水位が上昇し、交通機関への影響などが懸念されています。

過去には、1953年の昭和28年西日本水害や、1979年6月末の梅雨末期豪雨による氾濫など、大きな被害をもたらす水害も発生しています。これらの経験は、地域住民にとって、防災意識の向上を促す貴重な教訓となっています。

流域と利水施設

今川の流域には、福岡県田川郡添田町、赤村、京都郡みやこ町、行橋市など、複数の自治体が含まれています。これらの地域は、今川の水資源と深く結びついた生活を営んでおり、その恵みとリスクを共有しています。

主要な利水施設としては、前述の油木ダムが挙げられます。このダムは、治水、利水、そして発電の多目的ダムとして、流域の発展に大きく貢献しています。

今後の課題

油木ダムの完成以降、水害は減少傾向にあるものの、依然として豪雨によるリスクは存在します。気候変動による降雨パターンの変化なども考慮し、より高度な防災対策の継続的な検討と実施が求められています。また、水資源の有効活用と環境保全の両立も重要な課題です。今川は、地域社会の繁栄と自然環境の保全という、相反する要素をバランス良く調和させていく必要がある、重要な水系なのです。

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