今日もわれ大空にあり

1964年2月29日に東宝の配給で公開された日本映画『今日もわれ大空にあり』（きょうもわれおおぞらにあり）は、当時の航空自衛隊を題材とした作品です。併映されたのは『社長』シリーズの一編である『続・社長紳士録』（監督：松林宗恵）でした。

物語の舞台となるのは、航空自衛隊の浜松基地。ここでは、それまで主力として運用されてきた要撃戦闘機F-86F セイバー（通称「旭光」）から、将来的に「最後の有人戦闘機」とも称された新鋭機F-104J/DJ スターファイター（通称「栄光」）への機種転換が進められようとしていました。本作は、この転換期を控えたパイロット訓練生たちと、彼らを指導するために基地へ赴任してきたベテラン教官の姿を中心に、その苦悩や人間的な交流を描き出します。また、本作は女優・酒井和歌子さんの東宝におけるデビュー作品でもあります。

映画のあらすじでは、F-86F飛行部隊「タイガー小隊」に新たに飛行隊長として着任した山崎二等空佐に焦点が当てられます。当初、隊員たちからの反発に直面しますが、様々な葛藤を経て交流を深めるうちに、徐々に彼らの支持を得ていくようになります。しかし、ある訓練の過程で自身の体の不調を自覚した山崎は、最新鋭機F-104への機種転換を断念せざるを得なくなります。苦悩の末、彼は地上勤務を受け入れる決意を固めます。飛行隊長としての最後の任務として、山崎はタイガー小隊の全機を無事に千歳基地へ移動させることを選びます。しかし、折り悪く千歳基地周辺は暴風雨が吹き荒れ、航空機にとっては極めて劣悪な飛行状況となってしまいます。果たして、この困難な移動任務を滞りなく完了させることができるのかが物語のクライマックスとなります。

本作の製作には、1960年に防衛庁から出された広報活動に関する訓令以降、史上初めて自衛隊が全面的に協力しています。特に航空自衛隊の戦技研究班、通称「ブルーインパルス」が空撮に協力しており、当時の訓練風景や航空自衛隊の活動の一端を垣間見ることのできる貴重な映像記録としての価値も持ち合わせています。高速機動時のパイロットが経験する意識喪失の危険性を表現するためには、東宝が得意とする特撮技術が駆使されました。ミニチュアではなく、実際に現役のジェット戦闘機を用いた迫力ある飛行シーンは公開当時話題を呼びました。出演者の佐藤允さんは、役作りのために本物のパイロットスーツなどの装備品を用いた際、その重さに苦労したと後に語っています。

撮影は、ブルーインパルスの拠点である浜松基地にて約1ヶ月間にわたり行われました。キャストの一人である夏木陽介さんは、千歳基地への移動に際してダグラス DC-3が使用されたと証言しています。本作への撮影協力に対する謝意として、東宝映画美術部の沼田和幸氏が「ブルーインパルス」の新たな機体塗装案をデザインしました。このデザインは1964年から使用機であったF-86Fセイバーの塗装として正式に採用されることとなります。

また、本作で撮影された一部の飛行シーンは、監督である古澤憲吾氏の次作『続・若い季節』や、1967年に公開された『日本一の男の中の男』といった別の作品にも流用されています。本作公開後の次期上映プログラムは、同じく古澤憲吾監督作品である『続・若い季節』と松林宗恵監督の『こんにちは赤ちゃん』の二本立てでした。本来予定されていた『無責任遊侠伝』（主演：植木等、監督：杉江敏男）が、主演の植木さんの病気により公開延期となったため組まれたプログラムですが、同一監督の作品が連続して上映されることは、プログラムピクチャー時代においては比較的珍しい出来事でした。

スタッフは監督が古澤憲吾、脚本が須崎勝弥、製作が田中友幸、音楽が広瀬健次郎です。主な出演者には、山崎二等空佐役の三橋達也、三上一等空尉役の佐藤允、小村二等空尉役の夏木陽介、有川由紀役の星由里子、山崎かおる役の新珠三千代、そして山崎洋子役でデビューした酒井和歌子などが名を連ねています。主題歌は、金田星雄とボニー・ジャックスが歌う「今日もわれ大空にあり」と、小宮恵子とボニー・ジャックスが歌う「空の男さ」の2曲があり、キングレコードからカップリングシングルとして発売されました。

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