今村太平

今村太平：映画理論の先駆者

今村太平（いまむら たいへい、1911年8月21日 - 1986年2月26日）は、日本の映画評論家であり、映像評論家として、特に映画理論の分野でその名を刻みました。本名は今村大平。

佐藤忠男が「日本で、映画理論家として一貫した仕事をし、多数の理論的著書を書いた人物として、今村太平の名を挙げることができる」と評するように、今村は日本の映画理論において重要な存在です。

生涯と業績

今村太平は父親の故郷である大分県で育ちました。父親の病死により中学校を中退せざるを得ませんでしたが、働きながら『キネマ旬報』などに投稿し、独学で映画評論を学びました。

1935年（昭和10年）には同人誌『映画集団』の創刊に参加し、左翼の立場から映画のあり方を考察しました。彼は、映画に原始時代の芸術の総合性が再び現れると見なし、その視点から漫画映画を高く評価するという先駆的な思想を打ち立てました。また、映画の記録性にも注目し、記録映画の推進にも力を注ぎました。

第二次世界大戦後は、「映画文化」や「映像文化」といった雑誌の編集に携わりました。評論家の岩崎昶との論争は、当時の映画界において大きな話題となりました。晩年には、作家の志賀直哉に関する研究も発表しています。

今村太平の思想は、高畑勲監督や鈴木敏夫プロデューサーにも大きな影響を与え、スタジオジブリが彼の著書『漫画映画論』を2005年に復刻したことは、彼の業績が現代においても高く評価されていることの証左と言えるでしょう。

主要な著作

今村太平は、生涯にわたって数多くの著作を発表しました。以下にその一部を挙げます。

『映画芸術の形式』（1938年）
『映画芸術の性格』（1939年）
『記録映画論』（1940年）
『映画と文化』（1940年）
『漫画映画論』（1941年）
『映画論』（1946年）
『映画の本質』（1952年）
『映画理論入門』（1952年、1954年）
『イタリア映画 そのネオ・リアリズム』（1953年）
『現代映画論 記録性と芸術性』（1957年）
『志賀直哉との対話』（1970年）
『志賀直哉論』（1973年）

これらの著作を通して、今村太平は映画の本質や可能性について深く考察し、日本の映画理論の発展に大きく貢献しました。

参考文献

* 杉山平一『今村太平　孤高独創の映像評論家』（リブロポート、1990年）

今村太平は、既存の映画理論にとらわれず、独自の視点から映画の可能性を追求した評論家でした。彼の思想は、現代の映像文化にも通じる普遍的な価値を持っており、今後も研究され、語り継がれていくことでしょう。

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