今治市乗合タクシー

今治市乗合タクシー（いまばりしのりあいタクシー）は、愛媛県今治市が主導し、地域住民の移動手段を確保するために運行している公共交通サービスです。近年、多くの地方都市と同様に、今治市においても自動車の普及や人口減少、公共交通を担う運転手の不足といった構造的な問題により、これまでの路線バスネットワークの維持が困難になりつつあります。こうした状況下で、路線バスが廃止・縮小された地域において、市民が日常生活を送る上で不可欠な移動手段を維持・確保することを目的として導入されました。

本サービスは、今治市地域公共交通活性化協議会が主体となり、市内に拠点を置くタクシー会社に運行業務を委託するという形で運営されています。地域の実情に合わせた柔軟な運行を可能にする体制となっています。

今治市乗合タクシーの導入に際して策定された「今治市地域旅客運送サービス継続実施計画」は、2020年に改正された地域公共交通活性化再生法に基づき、2022年2月25日付で国土交通省の認定を受けています。これは、同法改正後、全国で初めての認定案件として、地域における公共交通の持続的な維持・再生に向けた先進的な取り組みとして注目されています。

運行エリアと歴史的経緯

現在、今治市乗合タクシーは市内の3つの主要な地域で運行されています。最初に運行が開始されたのは、朝倉地域と吉海地域で、これらは2022年4月に実証運行を開始し、同年10月より本格的な運行へと移行しました。続いて、2023年10月からは玉川地域での運行も始まり、これにより、今治市内の3エリア（朝倉地域、玉川地域、吉海地域）でサービスが提供されています。

運行開始後もサービスの改善は続けられており、特に2024年10月には、朝倉地域および吉海地域において、それまで週の一部に限定されていた運行日が毎日に拡大され、運行便数も増加するなど、さらなる利便性の向上に向けた取り組みが進められています。

各地域のサービス詳細

朝倉地域乗合タクシー

この地域では、2022年3月末に瀬戸内運輸の朝倉線の一部区間が、さらに2024年9月末には全線が廃止されたことを受け、その代替として運行されています。2022年4月に運行が始まり、2024年10月からは毎日運行となり、便数も大幅に増強されました。運行は月曜日から日曜日まで（祝日も運行、年末年始を除く）行われ、有限会社延喜タクシーが受託しています。乗降場所は、旧市内エリアでは指定された場所（例えば、済生会今治病院やワールドプラザなど）が利用できますが、朝倉地域内では利用者が希望する任意の場所で乗降が可能です。主な系統は、地域内の移動と、地域と旧市内を結ぶ路線です。

吉海地域乗合タクシー

吉海地域における運行は、2022年3月末に瀬戸内海交通の下田水港～田浦線が廃止されたことにより、2022年4月に開始されました。運行当初は週5日でしたが、2024年10月からは毎日運行（月曜日から日曜日、祝日も運行、年末年始を除く）に拡大されました。運行は有限会社おおしまタクシーに委託されています。乗降場所は、吉海支所周辺の8ヶ所が指定されているほか、田浦・椋名地域では利用者が指定する任意の場所で乗降できます。主な系統は、吉海支所周辺と田浦・椋名地域を結ぶ路線、および田浦・椋名地域内の移動です。

玉川地域乗合タクシー

玉川地域では、2023年9月末に瀬戸内運輸の葛谷線および神子森線が廃止されたことを受け、2023年10月から運行が始まりました。運行は月曜日から金曜日まで（祝日・年末年始を除く）となっており、常盤タクシー株式会社が受託しています。この地域では、玉川地域内に100カ所以上の指定停留所（ゴミステーションや集会所など）が設けられており、地域内の細やかな移動に対応しています。また、旧市内エリアにも乗降可能な場所（例えば、イオンモール今治新都市など）が設定されています。運行系統は、玉川地域内での移動と、玉川地域と旧市内エリアを結ぶ路線です。

利用方法

今治市乗合タクシーの全ての路線は、事前の予約が必要です。予約がない場合は運行されません。利用を希望する際は、定められた方法で事前に予約を行う必要があります。この予約システムにより、利用者のニーズに合わせた効率的な運行を実現しています。

まとめ

今治市乗合タクシーは、路線バスの廃止によって交通空白地帯となりうる地域において、住民の生活を支える重要な足として機能しています。法に基づく認定を受けたこの取り組みは、今後の地域公共交通のあり方を考える上でも参考となる事例と言えます。予約制であることなどの特徴を理解し、地域の交通手段として積極的に活用されることが期待されます。

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