介助猿

介助猿とは

介助猿（かいじょざる）または介護猿（かいござる）とは、四肢に障がいを持つ方の生活をサポートするサルのことです。特に、霊長目オマキザル科オマキザル属に属するサル、中でもフサオマキザル（Cebus apella, C. libidinosus）が主に用いられています。

介助猿として用いられる理由

オマキザルは、手先の器用さが際立っており、物を柔軟に操作するために必要な高度な認知能力を備えています。また、介助を受ける人とのコミュニケーションに必要な社会的認知能力も他のサルと比較して高いと考えられています。

さらに、オマキザル属の中でも、フサオマキザルは動作の過剰な動きが少なく、注意の持続時間も長く、介助に適した気質を持っているとされています。

介助猿の長所

手先の器用さ: 物を柔軟に操作する能力は、介助犬などの他の介護動物にはない大きな利点です。
長い寿命: 長期間にわたって介助にあたることが可能です。
人間との親和性: 行動が人間に近く、介助を受ける人と深い絆を築きやすいです。

介助猿の短所

訓練期間: 成長に時間がかかり、訓練を終えるまでにおよそ5年もの長い期間が必要です。
訓練コスト: 1頭のサルを介助猿として育成するには、費用と時間がかかります。

しかし、実際に介助を行っているサルを調査した結果、介助中に特別な治療が必要となる事態はほとんど発生していません。また、NPO団体などでは、ボランティアの里親制度を活用することで、訓練期間の短縮化に取り組んでいます。

各国での状況

介助猿の研究は、1977年にアメリカで始まりました。ウィラードとポール・コーコランがタフツ霊長類プロジェクトとして、サルを麻痺患者の介護に利用する研究を開始しました。このプロジェクトは、現在ではNPO団体「ヘルピングハンズ」として活動を続けています。

その他、フランスやベルギーでも介助猿のプロジェクトが行われています。かつてはイスラエルでも行われていました。

日本においては、サルは身体障害者補助犬法の適用外となるため、介助猿の導入は実現していません。

介助の内容

介助猿は、訓練団体によって基本的な行動が訓練されています。ヘルピングハンズでは、1991年頃に60の基本課題が訓練されており、大きく以下の4つのカテゴリに分けられます。

1. 食事の介助: スプーンで食べ物をすくい、介助を受ける人の口に入れるなど。
2. 身の回りの介助: 顔を拭くなど。
3. 物の取得: 口で使う棒を拾うなど。
4. 物の操作: ドアの開閉など。

また、家庭に迎えられた後、介助を受ける人の足置き台に足を乗せるなど、個別のニーズに応じた行動も学習することがあります。

マリーナ・チャップマンの事例

コロンビアで幼少期にジャングルに置き去りにされたマリーナ・チャップマンは、ナキガオオマキザルに助けられたという事例があります。これは介助猿とは異なりますが、サルと人間との関わりを示す興味深い例です。

まとめ

介助猿は、身体に障がいを持つ方の生活をサポートする上で、非常に大きな可能性を秘めた存在です。訓練期間の長さなどの課題はありますが、その能力は今後の高齢化社会において、重要な役割を果たす可能性があります。

参考

マリーナ・チャップマン著、宝木多万紀訳『失われた名前　サルとともに生きた少女の真実の物語』2013年、駒草出版

関連項目

オマキザル
フサオマキザル
ヘルピングハンズ
介助犬
身体障害者補助犬
身体障害者補助犬法

外部リンク

* ヘルピングハンズ（英語）

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