仏国寺多宝塔

仏国寺多宝塔の解説

仏国寺多宝塔（ぶっこくじ たほうとう）は、韓国の慶尚北道に位置する仏国寺内にある仏塔で、8世紀の統一新羅時代に建設されました。1962年12月20日に大韓民国国宝第20号に指定され、1995年には石窟庵と共にユネスコの世界遺産に登録されています。

歴史的背景

仏国寺は、539年から540年にかけて新羅の法興王の時代に創建されたとされています。その後、574年に真興王の統治下で重修されたものの、史料は不足しており、信憑性が疑問視されることもあります。710年ごろに金大城が再建を発願し、774年に完成したことが伝わっています。多宝塔は金大城が手掛けたことが分かっています。

近世においては、仏教弾圧の影響を受け、1407年には仏国寺は廃寺となり、1592年の壬辰倭乱によって焼失しました。しかし、多宝塔を初めとする一部の石造物は奇跡的に残されたのです。1659年においては、かつての規模の10分の1ほどが再建されましたが、その後も災害や修復を経て、近年までその姿を保ちながら存在しています。

名称と伝説

多宝塔の正式名称は「多宝如来常住証明塔」であり、隣にある釈迦塔は「釈迦如来常住説法塔」と名付けられています。これらの双塔は法華経に登場する教えの象徴として位置付けられています。特に多宝塔は、「影塔」とも呼ばれることがあります。これは、造塔師の阿斯達が妻の阿斯女を思い、妻が池の水面に映る塔の影を待ち合わせたという伝承に由来しています。彼女が悲しみのあまり池に身を投げると、阿斯達もまた事の成就を知り、後を追って投身したと言われています。

建築様式

多宝塔は、他の仏塔とは異なる独特なデザインを持ちます。高さは約10.4メートルで、基壇は方形で幅は4.4メートル、四面に階段と石の欄干があります。塔身は3層構造で、底から順に四角形、八角形、円形へと形を変えます。この形の変化は、「現世から仏界への教え」を象徴しているとされます。

塔の装飾には、ハスの彫刻や各層の屋蓋を支える独特な構造があり、多宝如来を表現する象徴的な意義を持っています。また、相輪部もほとんどが残念ながら宝珠が欠損していますが、他の装飾的部分は良好な状態で保存されています。

まとめ

仏国寺多宝塔は、その美しさと歴史的な価値から、韓国の文化的な遺産の中でも特に重要な存在です。長い年月を経て、様々な人々によって大切に守られてきたこの塔は、今なお多くの観光客や研究者に愛されています。多宝塔は、韓国の古代仏教文化を後世に伝える重要な遺産として、これからもその価値が評価され続けることでしょう。

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