仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約

仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約

この条約は、労働環境における暴力やハラスメントを根絶するための国際基準を定めた初の法的文書です。多様な形態の危害が働く場での人々に影響を与える中、国際労働機関（ILO）により作成され、2019年6月に第108回総会で採択され、2021年6月に発効しました。この条約は、ハラスメント禁止条約とも称されています。

暴力とハラスメントの定義

条約では、暴力とハラスメントは「単発的または反復的であり、身体的、精神的、性的もしくは経済的な害を与えることを目的とした行為や慣行、またはその脅威」として明確に定義されています。この定義には、ドメスティックバイオレンス（DV）や性別に基づくハラスメントも含まれています。条約は、全ての国がこうした暴力行為を許容しない職場環境を創出することを求めています。

批准国

2021年において、この条約を批准した国々は、アルゼンチン、アルバニア、アンティグア・バーブーダ、イギリス、イタリア、ウルグアイ、エクアドル、エルサルバドル、ギリシャ、サンマリノ、スペイン、ソマリア、中央アフリカ、ナミビア、バルバドス、フィジー、ペルー、南アフリカ、メキシコ、モーリシャスの20か国です。これらの国々は、職場での暴力とハラスメントを排除するための具体的な措置を講じることが求められます。

日本の状況

日本はこの条約を支持していますが、具体的な批准には慎重な姿勢を示しています。2021年時点では未批准であり、日本語訳も正式なものではなく、仮の翻訳が存在します。日本が批准に至っていない背景には、経済界や企業が訴訟の増加を懸念していることが指摘されています。雇用者は、賠償金や訴訟リスクが増えることを懸念しており、そのため条約の実施に消極的な態度を取っています。

関連項目

この条約を理解する上で、いくつかの関連項目を考えることが重要です。例えば、ハラスメントには多様な種類があり、職場においては、パワーハラスメント（パワハラ）、セクシュアルハラスメント（セクハラ）、マタニティハラスメント（マタハラ）、カスタマーハラスメント（カスハラ）といった事例が存在します。これらは、職場環境の健全性を脅かす要因となるため、しっかりとした対策が求められています。国際労働機関（ILO）も、これらの問題に対する意識を高め、より良い労働環境の実現に向けた取り組みを進めています。

この条約の存在は、仕事の世界における暴力やハラスメントの根絶に向けた重要な一歩であり、全ての雇用者と労働者にとって、より安全で安心できる職場を作るための基本的なガイドラインとなるでしょう。

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