仕舞

仕舞（し-まい）について

仕舞とは、能楽の一部を簡素な形式で表現する舞であり、通常は面や装束ではなく、紋服や袴といった軽装で演じられます。この形式は、能の略式上演の一形態として位置付けられています。広い意味では仕舞は舞囃子と共に語られることがありますが、舞囃子は囃子と共演するため、仕舞とは異なります。一般には、仕舞は囃子を伴わず、舞事や働事を省略した短い踊りを指します。

舞囃子との違いを考えると、舞囃子は一曲の中で前面に踊りが取り入れられますが、仕舞は通常、謡のあるシテの舞の一部を抜粋して演じることが多いです。時には、全体の能楽の中で複数の仕舞が取り入れられることもあります。基本的に、仕舞はクセ（舞の習慣）や段物などを基に構成され、基本的に能の型を意識しながらも、独自の型が施されています。このように、舞の始まりや終わりが仕舞特有の型で表現され、全体的により象徴性が強調されるよう工夫されています。

仕舞の伴奏は地謡のみで行われ、演者は装束や面を使わず、紋付袴や裃を身に着けて舞います。演じる際には、通常、最初の謡を座った状態で始め、その後立ち上がって舞い、最後は打ち込みと呼ばれる型で座って一曲を締めくくります。謡の多くは地謡に依存していますが、時には演者との掛け合いになっているものもあります。

一般的に仕舞の上演時間は短く、平均して10分程度、長くても20分ほどです。主にシテ方の演者が一人で行う場合が多いですが、「小袖曾我」と「二人静」のような相舞や、「龍虎」や「舎利」のようにシテとツレが異なる舞を同じ舞台で見せるパターンも存在します。また、「張良」や「羅生門」では、ワキ方の仕舞もあり、狂言方でも小舞として仕舞に似た形式で上演されることがあります。

仕舞は観賞用としても上演され、同時に能を演じるための稽古としても利用されます。その基本技術の一つとして、独特の運歩法である摺り足が挙げられます。この運歩法は、足裏を地面につけたまま滑るように進むものです。特にこれを「ハコビ」と呼び、体勢としては膝を曲げ、腰を入れ、重心を落とすことが求められます。このいわゆる「構え」が重要なポイントです。

能の舞台は、歌舞伎のように横長の舞台と異なり、正方形の舞台上で三方からの観客を意識しながら、円を描くように動くことが特徴です。また、能舞台は音が良く反響するように造られているため、演者が足で舞台を打つ「足拍子」も重要な表現手法となっています。

仕舞の代表的な型

以下にいくつかの仕舞の型を紹介します。

• - シカケ（サシコミ）: 立ったまま扇を持った右手を正面に上げます。
• - ヒラキ: 左右に足を出しながら両腕を広げます。シカケとヒラキを続けて行う型は「シカケヒラキ」と呼ばれます。
• - 左右（さゆう）: 左手を上げて左に出た後、右手を上げて右に出ます。
• - サシ: 右手の扇を横から上げて正面に掲げます。
• - シオリ: 両手を前に差し出し、泣くことを表現します。
• - 枕扇: 左手で扇を持って顔を隠し、寝ていることを示します。

これらの型の連続が仕舞を構成します。柳田国男の指摘によると、「踊り」とは飛躍を含む動きを表現し、「舞」は「まわる」といった円運動を意味する言葉です。能の舞は静的に見えることが多いですが、緩急を持ち、時には激しい動きも挟みます。また、安定した状態を維持することで、内面からの気合や人間的な表現を引き出そうとする独自の特徴も持っています。

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