仙南村

仙南村

仙南村（せんなんむら）は、秋田県の中央部に存在した自治体です。その歴史は古く、平安時代後期に起きた重要な戦乱である「後三年の役」の主要な舞台となった地として名を残しています。

地理的には、村域の大部分が平坦な土地で構成されていました。南部には国道13号が通り、その沿道には飯詰山、鞍掛山、大森山といった丘陵地帯が広がっています。一方、東部は雄大な奥羽山脈に接しており、その山麓や中腹からは縄文時代の遺跡や、後三年の役における清原氏の拠点であったとされる金沢柵の跡地が発見されています。かつて太平洋戦争前には、江畑宇一郎氏をはじめとする50町歩を超える広大な農地を持つ大地主が多く存在した地域としても知られていました。

仙南村がその姿を現したのは、1956年9月30日のことです。当時の飯詰村と金沢西根村が合併して誕生しました。その後も村域の調整が行われ、1958年4月22日には横手市の一部（旧金沢町の一部）を編入しています。

村政の歩みを見ると、教育分野では1960年4月1日に三つの中学校（金沢西根、飯詰、金沢）を統合し、新たな仙南中学校が開校しました。防災面では、同年5月9日に飯詰駅前で大規模な火災が発生しています。経済や産業の振興にも力が入れられ、1967年12月20日には誘致工場である三共光学秋田レンズ工場が完成しました。交通インフラの整備も進み、1971年10月6日には国道13号の金沢バイパスと六郷バイパスが開通し、利便性が向上しました。

村民の福祉向上にも積極的でした。1973年4月には1歳未満の乳児医療費無料化が導入され、子育て支援の礎が築かれました。公共事業としては、1973年7月31日に県営金沢ダムの起工式が行われています。社会福祉分野では、1975年4月9日に知的障害者更生施設「後三年更生園」が開園しました。農業振興では、1976年9月10日に天神堂地内にカントリーエレベーターが完成し、米作りの拠点となりました。村の行政機能の中心となる役場新庁舎と保健センターは、1982年9月10日に竣工記念式典を迎えています。文化・歴史への関心も高く、1983年12月1日には民俗資料収蔵室がオープンし、地域の歴史や文化を伝える場となりました。村のアイデンティティである後三年の役に関連し、1987年9月13日には「後三年の役900年祭」が盛大に開催されています。

村民の健康増進やレクリエーションの機会も充実しました。1992年4月3日には複合温泉施設「湯〜とぴあ」が、翌1993年7月4日には「プールパークSENNAN」がそれぞれオープンし、憩いの場となりました。また、村の出身者を顕彰する動きもあり、1993年10月16日にはパイロットの佐藤章氏生誕100年祭が行われています。

1990年代後半には文化イベントが活発化し、1998年には画家・藤井勉氏の新作展や航空自衛隊北部航空音楽隊コンサート、屋外ジャズコンサートなどが開催されました。さらに、1998年末には仙南村立仙南東小学校の児童が「欽ちゃんの仮装大賞」に出場し、雪国のお正月をテーマにした演技で準優勝という快挙を成し遂げ、村に明るい話題を提供しました（2003年にも再度出場）。

2000年代に入ると、行政サービスの質の向上や情報化への対応が進められました。2001年2月には行政モニター制度や、ひとり暮らし高齢者宅への一斉除雪ボランティア事業が開始。同年4月には出産祝い金制度が導入され、子育て支援がさらに手厚くなりました。6月にはポイント制ボランティア制度も導入されています。考古学的な発見もあり、2001年6月に上深井地区で古代の竪穴建物跡や墨書土器、人形などが出土し、「矢矧殿遺跡」と命名されました。情報通信環境の整備も進められ、同年8月には村内14施設に地域インターネットが整備されました。行財政の健全化を目指し、12月には仙南村行財政改革大綱が策定されています。スポーツ面では、2002年5月27日に秋田県国体準備委員会において、バドミントン競技の仙南村開催が正式に決定しました。情報発信の拠点として、同年5月28日には村のホームページが開設されました。高齢者雇用対策として、6月にはシルバー人材センターが始動しています。

2003年以降も村の活性化に向けた取り組みが続きました。1月にはパソコンを活用したコミュニティー店舗事業が開始されています。公共施設整備では、8月5日に仙南村総合体育館の建築が着工されました。地域経済振興のため、12月12日には道の駅の運営会社となる第三セクター「株式会社雁の里せんなん」が設立されました。情報化はさらに進展し、2004年1月22日には隣接する千畑町、六郷町との間で光ファイバー網による地域イントラネットが開通し、連携が強化されました。教育・子育て支援では、同年4月1日に幼稚園と保育園の一体的な運営が始まり、同日には子育て支援相談室もオープンしました。スポーツイベントの誘致も積極的に行われ、10月31日には総合体育館でバスケットボールのJBL招致大会が開催されています。

仙南村としての歴史は、2004年11月1日に幕を閉じました。この日、村は千畑町、六郷町と合併し、新たに美郷町（みさとちょう）の一部となったのです。村が歩んだ約48年間で、人口はピーク時の1万人超から合併時には8千人台へと減少傾向にありました。

村長は初代の江畑宇一郎氏から始まり、合併時の松田知己氏まで、計7名が村政を担いました。松田知己氏は、合併後の初代美郷町長に就任しています。

交通面では、JR奥羽本線が村内を縦断し、後三年駅と飯詰駅が設置されていました。主要道路としては、国道13号が村を貫き、羽州街道として古くから交通の要衝でした。

村は多くの著名人も輩出しています。画家・藤井勉氏、力士の華王錦関、清の湖関、シンガーソングライターグループの「後三年」、デザイナーの澁谷和之氏、政治家の松田知己氏などが仙南村にゆかりのある人物です。

名所・旧跡・観光スポットとしては、歴史公園として整備された後三年の役関連地や金沢柵跡、地域の玄関口である道の駅雁の里せんなん、憩いの場である雁の里山本公園などがあります。また、毎年小正月に行われる「天筆焼き」は、五穀豊穣や家内安全を願う伝統的な火祭りとして地域に根付いていました。

仙南村は、古代からの歴史を背景に持ち、近代以降も合併までの約半世紀にわたり、インフラ整備、福祉・教育の充実、産業振興、文化活動など様々な分野で発展を遂げた村でした。その歴史と地域文化は、美郷町の一部として今に引き継がれています。

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