金沢柵

金沢柵：後三年の役を彩る古代山城

秋田県横手市に位置する金沢柵は、平安時代頃に築かれたと推測される古代日本の城柵です。正確な築城時期や範囲は未だ解明されていませんが、後三年の役における重要な舞台として知られています。発掘調査によって古代城柵としての明確な遺構は確認されていませんが、戦国時代の金沢城があった山が比定地とされており、この地から9世紀後半の遺物が出土していることから、その存在が裏付けられています。

金沢柵は、羽州街道を見下ろす、天然の要害と言える立地を誇っていました。周囲を断崖絶壁が囲み、さらに数多くの堀を備えた堅固な防御施設であったと考えられています。この地の戦略的重要性を示すように、清原氏一族が居城として利用していました。

後三年の役と金沢柵

後三年の役では、清原家衡と清原武衡兄弟が金沢柵に籠城し、源義家率いる朝廷軍と激しい戦いを繰り広げました。源義家率いる軍勢も、金沢柵の堅牢な防御に苦戦を強いられたと言われています。幾多の攻防の後、ついに1087年（寛治元年）、兵糧攻めによって落城しました。この戦いは、日本における最初の兵糧攻めと言われています。

落城後も、金沢柵は重要な拠点として機能し続けました。1458年（長禄2年）には南部守行の子、金沢右京亮が入り、1470年（文明2年）まで居城としました。その後は小野寺氏の家臣、金沢権十郎などが居城として使用しました。江戸時代には、久保田藩主佐竹氏が秋田に入部した際、金沢に城を再整備する案が提案されましたが、最終的には久保田城が居城となり、金沢城は一国一城令によって廃城となりました。

現在の金沢柵

現在、金沢柵跡は金沢公園（金澤八幡宮）として整備され、一般に公開されています。公園内には、後三年の役に関わる数々の史跡が残されています。源義家が愛用の兜を埋めたと伝わる兜杉、武衡が身を隠したとされる蛭藻沼、鎌倉景正が戦功を記念して築いた景正功名塚、兵糧庫跡、当時の柱穴址などが、当時の激戦の様子を今に伝えています。また、柵北側の断崖下を流れる厨川には、片目カジカという珍しい魚が生息しており、その片目は、後三年の役で敵に右目を射られた鎌倉景正が、ここで目を洗ったという伝説と結び付けられています。

周辺環境

金沢柵周辺には、後三年の役に関わる史跡が点在しています。沼柵、大鳥井山遺跡、蛭藻沼、立馬郊、西沼など、周辺地域全体が後三年の役の歴史を物語る貴重なエリアとなっています。これらの史跡を訪れることで、金沢柵の歴史的意義をより深く理解することができます。

金沢柵は、単なる古代の城柵というだけでなく、後三年の役という激動の時代を象徴する重要な史跡です。その歴史的意義と、自然豊かな環境が調和した金沢公園は、歴史と自然に触れ合える貴重な場所として、多くの人々を魅了し続けています。

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